2018年5月8日火曜日

『The Visit』-子供の成長を描くジュブナイル・ホラー

 M・ナイト・シャマランの、最近作の一つ前の、低予算スリラー。
 映画宣伝に掲げられている「三つの約束」が意味不明で、映画会社め、余計なノイズを入れやがる、と些か腹立たしいが、それは映画の罪ではない。
 POV手法に対する個人的な好感は、作り手の工夫がストレートに感じられるからだ。こんな時までカメラを回すのかよ、とか、そんなに都合よくカメラの視界に重要なものが映るかよ、とかいう突っ込みは、厳しくはすまい。
 この映画については、白石晃士的なフェイクドキュメンタリー的な面白さはないが、怖い目に遭う本人達(姉と弟)の心情に感情移入できるという意味で臨場感を増す効果はある。
 そうなればもう面白い。充分に怖いし、その状況に対峙する姉弟の健闘も好もしい。
 『サプライズ』ほどのハードアクションは期待するでもなし、比較としては『ドント・ブリーズ』だが、これはさすがに結末の波状攻撃で『ドント・ブリーズ』が上手だったが、そもそもこれは『ドント・ブリーズ』が特別にすごいという話であって、『The Visit』のエンディングはそれとは違って、これもまた出色の後味の良い終わりだった。

 それにしても、宇多丸さんの言う通り、これは子供の成長を素直に描くという点では『アフター・アース』とまったく同じテーマの、いわばジュブナイル映画だったのだが、あちらのつまらなさに対するこの映画の面白さはいったい何事だ。
 ユーモアのあるなし、というのは無論大きいが、『アフター・アース』に描かれた成長が、あまりに観念的であったことが大きいと思われる。あちらでは乗り越えるべき敵が強大過ぎて、恐怖から目を逸らさないとかいう実行命題が非現実的なのだ。だから課題の解決による成長が観念的にしか感じられない。
 それに比べるとこちらは、充分に対峙可能な恐怖であり、しかも充分に怖い。むしろ『アフター・アース』の恐怖に比べて現実的であるだけに一層怖い相手に勇気を振り絞って対峙するという行為が、説得力のある成長を感じさせるのだ。

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