2019年3月10日日曜日

『ハード・ソルジャー 炎の奪還』-B級そのもの

 ジャン=クロード・ヴァン・ダムを観ようと思ってしまうのは『その男 ヴァン・ダム』の好意的印象からだが、ああ、やはりB級だった。「なんとかソルジャー」とかいう代表作があったなあ…と怪しいうろ覚えの記憶があったのだが、『ユニバーサル・ソルジャー』にあやかった邦題なのだった。「炎の奪還」という副題も、日本語としてどうなの、というひどいセンス。確かに人質の「奪還」が映画の主題なのだが、「炎の」って何?
 といって原題の『6 Bullets』では意味不明だし。人身売買による子供の代金が「銃弾6発」だった、というのだが、これは何かの隠喩なんだろうか? わずかな金額、というなら6ドルでよかろうに。6発の銃弾が物語的に意味を持っているような様子もなかったなあ。
 ついでに落ちぶれた主人公は肉屋をやっているんで、物語中で敵方から「ブッチャー」と呼ばれるのだが、これが何か効果的とも思えないし、娘を誘拐される父親が総合格闘家という設定も、何の効果があるかわからなかった。
 うーん、無い物ねだりをしてもしょうがないか?

2019年3月3日日曜日

『突入せよ あさま山荘事件』-安定した映画職人の仕事

 「浅間山荘事件」の攻防戦を、指揮した佐々淳行を主人公に描く。
 『大空港』の映画力に圧倒されて、こういうのは邦画には無理だよなあと思っていたところ、続けて見た本作に邦画を見直した。スケールとしては比べるのは無理があるが、映画力は負けてない。原田眞人作品はここ3年ほどで『我が母の記』『日本のいちばん長い日』と、それぞれ力のある作品を観て、その度、洋画を見ては彼我の差を思い知らされる邦画のレベルを見直すことになった。ちゃんと映画を撮れる職人が日本にもいるのだと。おまけに役所広司が主演だから、安定感も抜群。
 立てこもっている犯人側の視点が全くないのが難点だという批判はあるだろう。確かにそれをやれば、物語がもっと立体的になるだろうな、という期待もある。
 だが、内部がどうなっているのかがわからないという、警察側からの不安感を描くためには、あえて内部を描かない、というやり方はあるだろう。それを意図しているのかどうかはわからないが。
 警察関係者が主人公ということで、やはりこれも横山秀夫の味わい。困難な作戦に、それぞれの部署のそれぞれの立場の関係者が、それぞれの背景を負って立ち向かう。その複雑さと、それが組み合わさって物事が成就する充実感は大きい。

2019年3月2日土曜日

『大空港』-堂々たるハリウッド・エンターテイメント

 有名なシリーズの第一作ということで放送されたのを機に。雪で機能不全に陥りかけた空港で起こるさまざまなトラブルに対応する空港長や旅客機機長や航空会社社長やスタッフの活躍を描く。
 始まってすぐ、これはまた見事なハリウッド映画だと感心しきり。数多くの登場人物が人物がそれぞれに抱えるドラマをわずかな断片で見せながら、それらをストーリーの中に組み込んでいく。脚本が巧みなら、演出と編集も映画的な技術の粋を極めた観がある。斬新というのではなく、映画的見せ方の手堅さからくる安心感が、物語の緊迫感を損なわない。
 物語に暗さはないのだが、複数の家庭崩壊が描かれるところが時代を表しているのだろうか。70年代パニック映画の嚆矢だというのだが、それよりも人間ドラマの絡み合いの方にこそ見所があった。そういう意味では横山秀夫作品の味わいに近い。
 映画的には、バート・ランカスターやディーン・マーティンなどの主役級には思い入れはなく、むしろジョージ・ケネディが画面に現れると、その安心感たるや、もはや快感ですらある。

2019年2月24日日曜日

『トランス・ワールド』-SSS低予算映画の佳品

 森の中の小屋に迷い込んだ3人の男女。森から出ることもできず、過ごすうち、3人の関係が徐々に明らかになる。クローズドサークルのSSSということで、事前情報まるで無しで借りてきた。
 低予算映画らしい舞台限定の中でも、森の中の小屋というシチュエーションはとりわけ安上がりにできる。だがこの安っぽさはマイナス要因ではない。寒々しい雲の垂れ込めた森の雰囲気は悪くないし、脚本さえ練れていれば、映画は面白くなるのだ。
 物語の大ネタが、最近読んだ辻村深月の「かがみの孤城」と重なったのは偶然とはいえ驚いた。そこが核心で、あとはそれにむけてどうネタをちりばめていくかが、この手のSSSの力の入れどころ。
 観終わった直後は、もっとあれこれ盛り込めそうな設定なのに惜しい、と思ったのだが、早送りで最初から辿ってみるとそういえばあれこれと伏線が張ってあることにあらためて気づき、評価もだいぶん上がった。
 それにしても苦しい邦題。原題の『Enter Nowhere』でも、邦訳して『出口なし』でもジャンルがわからんし、といってどう付けたらいいものか思案してしまう、というのはわからなくもないが。

2019年2月14日木曜日

『エクスペンダブルズ3』-まずまず

 1.2と観てきたので落とし前をつける意味で。
 印象としては2の方が密度が高かった気がするが、3も悪くはない、とも思った。相変わらず、言うのも馬鹿馬鹿しいほどの人命軽視と、あちらの弾は決してこちらにはあたらないという不合理を見ないことにすれば。
 ただ、1,2の時の、おお、この人も出てくるのか! という高揚感(というかやり過ぎ感)がもう感じられなくなって残念。ハリソン・フォードとメル・ギブソンは、この映画の売りである「廃用品」的な扱いとは感じられなくて、最初からそういう映画、という感じになってしまう。
 もっとも初登場のアントニオ・バンデラスはハイテンションが面白いキャラクターで、大いに成功しているが。出てくるだけでクスリと笑えてしまう。
 ともあれ、ラストのビルの爆発から間一髪で逃れる緊迫感などはやはりよくできていると言って良い。

2019年2月11日月曜日

『ロング・グッドバイ』-楽しみ方がわからない

 名高いハードボイルドの名高い映画版。あちこちで言及されてはいるので観た気になっていたがやっぱり観たことなかった。
 終わりまで観て呆気にとられる。どう観れば良いのかわからない。
 菊地成孔と伊集院光の対談でこの映画の見方について教わった。なるほど、物語の結構などを考えてはいけないのだ、と。
 そう思えば、夜の海はドキドキしたし、ラスト近くのメキシコの並木道も良かった。エリオット・グールドが歩いてくるだけでも良いし、遠ざかって行く途中ですれ違うおばあさんとワンステップ踊るところも、映画的に見事な絵作りだ。
 それでも、原作にあるという友情が描かれない映画の「物語」に、何を見いだせば良いのか。70年代的ニューシネマ的頽廃? わからん。

2019年2月10日日曜日

『ブラッド・ワーク』-意外と真っ当なミステリー

 クリント・イーストウッド監督・主演だというのだが、知らなかった。というか、あらためて調べるとイーストウッドって、監督としてこんなに撮ってるのかと驚く数の作品があるではないか。有名どころばかりでなく。
 犯人から警察、というかFBIの特定捜査官への挑戦状つき連続殺人事件があって、その捜査官がイーストウッドだというから『ダーティー・ハリー』かと思っていると、意外なほど真っ当なミステリーとして展開していく(パズラーではないが)。サイコスリラーというより。
 捜査に従って事件の様相が明らかになるにつれ、意外な展開になっていく。サスペンスたっぷりに犯人との対決があって…と堂々たる娯楽作なんだが、ラブロマンスはやり過ぎだとも思う。必要?