スクールカースト最上位にある女生徒が突然自殺し、その「遺書」がクラス全生徒に配られる。自殺の動機をめぐって、HRを利用した「遺書」の公開が行われる…。もうこの設定だけで、いやおうなく期待してしまう。
とはいえお話はすっかり知っている。というか原作に対する確かな信頼から、映画はだめに違いないなどと先入観を持っていたが、やはり興味が勝って観始める。
いや、悪くない。途中で気になって、原作を読み直してみる。意外に丁寧に実写化しているのだとわかる。ただ、漫画では気にならないリアリティの水準が、実写で人間に演じられてしまうとちょっと鼻白むような大げさに感じられてもしまう。
が、その分、演技の迫力が物語の力を増しているところもある。とりわけ、高石あかりはすごかった。『この星の校則』での繊細な感情表現も見事だったが、こちらの狂気を含んだ昂ぶりはまた圧倒的だった。
とはいえ、本作の魅力はもちろん原作のミステリー要素にある。そこが、映画の尺の中ではかなり忠実に再現されているのは好感が持てた。いや、本当にそこだけを原作並みに再現するなら、まだやれたと思われる。割愛されてしまっている要素はあった。だからこれは映画のバランスを考えてとは思われる。それでも、バランスよりもそこをつきつめてほしいとも思う。
さて、久しぶりに一気に通読した原作は相変わらず素晴らしかった。物語の展開にともなって秘められた意外な設定が次第に明らかになる、ミステリーとしての常套手段、ドンデン返し的構成も堅実だが、何より、遺書という「テクスト」をめぐるミステリーという設定が魅力的だ。前例はある。エドガー・アラン・ポーの『マリー・ロジェの謎』は新聞記事を読み解く「安楽椅子探偵」物で、まったく「テクスト」読解をめぐるミステリーだった。島田荘司の『眩暈』も謎の手記を読解していくミステリーだった。考えてみればそういう先例もあるとはいえ、少年漫画で、このようなテクスト解釈の多義性をめぐる読み換えがこれほどかと思わされる豊穣さで陳列される圧巻の展開に翻弄され、それによって生ずる心理ドラマに酔い、実に幸せな時間を過ごした。
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