2017年8月10日木曜日

『ザ・ドア 交差する世界』 -拾い物のドイツ映画

 ドイツ映画だというので、例によってヨーロッパ映画の画面、空気感だ。画面の暗さも、適度なざらつきも、良い。こういうのを時々見たくなる。
 「午後のロードショー」枠で見るにふさわしい、大作、名作というわけではない、だが安っぽいというわけではない、まとまりのある、映画的小宇宙を体現した映画。「拾い物」というのは、こういう風に「午後のロードショー」とか深夜枠で偶然見るからいいのだ。期待値が低くて。
 5年前に戻れる洞窟のようなトンネルのような(「ドア」じゃないじゃん、という突っ込みは当然ある)暗い通路を通って、子供を事故で失くしていない5年前の世界に行った男の話。SFといえばSFにありがちなタイム・リープ物だが科学的な説明はまるでない。タイムパラドックスについて言及する気もなさそうだから、パラレル・ワールド設定なのだろう。
 だが、そういうものがあったとするとどんなことが起こるかについては、それなりに考えて、物語に組み込んでおり、よくできた脚本だと言える。終盤の、トンネルを通過した未来人たちが実は結構いるという展開がもたらすカタストロフも、苦いギリギリの悲劇を避けえたエンディングも、「拾い物」としての評価を十分に与えて良い。

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