『銀河の一票』で山口馬木也が良い芝居をしてるなあと思って、出世作を見ようと。
なるほど、山口は素晴らしかった。顔立ちがちゃんと「侍」然として表情も内面の葛藤を表現している。
とはいえ、脚本の甘さと演出の甘さはいかんともしがたい。脚本兼監督の安田淳一の目線の低さは、本当に素人レベルとしか感じられない。
低予算映画のヒットということで『カメラを止めるな』の再来らしいのだが、観始めると全然レベルが違う。役者陣の演出が甘くて、いわゆる学芸会。だがこれは役者が下手だというより演出の目線が低いのだろうと思われる。編集のタイミングもうまくない(だというのに、アカデミー賞では編集賞!!)。
それでも、中盤からの意外な展開が、確かにわずかに面白さを感じさせるから、そこに注目すれば、面白い映画だったという感想はありうる。だがそこから発展させられる可能性ばかりがあれこれ浮かんでしまって、せっかくの美点も惜しいばかり。
これは一体何事だろう。
たぶん映画業界の自己愛なのだろうというのが推測(憶測、邪推)だ。『桐島部活辞めるってよ』のアカデミー賞にもそう思った。あちらはそれなりにあれこれ感じる人もいるらしいので好みの問題なのかもしれないが、本作の方は、特別に映画製作に思い入れのない観客から見ても、これが本当に強い物語たりえていると、アカデミー賞関係者は思っているのだろうか。この、スカスカで浅い映画が。
『カメラを止めるな』がアカデミー作品賞をとれなかったのは『万引き家族』が同じ年だったから仕方ないとはいえ、脚本から役者陣の演技まで、魅力に満ちた奇跡のようなあの映画と本作を並べて語ることなど、とてもできない。
米国アカデミー章はやはりアメリカの状況を反映した選考に首をかしげつつも理解もできるのだが、日本アカデミー賞はこういう選考をするから信用できない。