2020年1月2日木曜日

『殺人の追憶』-唸るほど面白い

 新作の『パラサイト』がカンヌ映画祭のパルム・ドール受賞というニュースが流れているせいで、『グエムル』に対する高評価で前から気になっているこの映画を、次にレンタル屋に行ったら借りてこようかとさえ思っていたところ、テレビ放送したので。
 面白かった。唸るほど面白い。映画的な見せ方を実に心得ている。例えばこんなカット。
 葦原を軽い俯瞰で捉える。そこに画面上方から葦を割って手前に歩く刑事の姿が画面に入ってくる。その前からの話の流れで証拠を探しているのだとわかる。そのまま画角が広くなると、その刑事の後ろには数十人の警官が列になって、同じように葦原を割って進んでいる。これだけのカットが実に映画的なのだ。
 警察が被害者の遺体を探しているという「意味」を伝えるだけではなく、観客が見たものを次々と解釈する心理を誘導して、それをコントロールしている。
 被害者が赤い服を着ているという情報が伝えられ、登場人物の一人が赤に近い服を着て登場すると、これはそういうことか、と観客は予想してその不安を抱きながら続きを観る。その人物に犯人の魔の手が迫る。そのうえでこの予想を裏切りさえする。
 連続殺人事件を追う刑事達の話ということでは、実話がベースでどちらも未解決事件を扱ったデヴィット・フィンチャーの『ゾディアック』を思い出させたが、並べても遜色ない面白さ。どちらも監督の力量が高いのが画面のそこらじゅうから滲み出ている。

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