2017年2月10日金曜日

『ジャッカルの日』 -淡泊で緊迫のクライム・サスペンス

 ポリティカルサスペンスとして名高い作品をようやく。フランスのドゴール大統領暗殺を企む謎の殺し屋「ジャッカル」の暗殺計画とフランス警察の捜査をドキュメンタリー・タッチで追う。
 …というようなありがちな紹介のとおり、最近の演出過多な映画やらテレビドラマやらを見慣れた目には、最初のうち、あまりに淡泊な描写に拍子抜けする。
 これは最後の暗殺決行とそれを阻止する警察の銃撃戦の場面まで一貫している。昨今の映画なら、緊迫した音楽で盛り上げ、細かいカットでアップにしたりロングにしたり、ここぞというところはスローモーションにして…と、これでもかと劇的に見せるであろうクライマックスも、あれよと終わってしまう。むしろワイヤーアクションだかなんだか、ジャッカルが壁まで吹っ飛ぶアクションにびっくりするくらい、全体は淡泊なのだ。
 それでも、最初のうちの拍子抜けに負けずに観ているとどんどん面白くなる。
 特注のライフルが完成して、市場で西瓜を買うのはもしやと思っていると、はたして試射の標的にするのだった。ご丁寧に顔らしきものをペイントして木に吊す。何発か撃っては当たり所を確認して、スコープの微調整をする。おおよそ真ん中に当たるところまで調整が終わって、さて、何やら違う弾をこめる。これはもしやと思っていると、西瓜が爆発したように木っ端微塵に四散して、これは注文の際に話題にしていた炸裂弾なのだと知れる。本番ではドゴールの頭がこうなるのな、と想像させて、これこれ、こういうところが楽しいのだ。
 ルベル警視を演じたマイケル・ロンズデールという俳優の、人の良いおじさん的風貌と手際の良い捜査のギャップも楽しい。有能な捜査官の仕事ぶりに感心しつつ、それをかいくぐって計画を着々と進めるジャッカルからも目を離せない。

 ところでジャッカルが途中で協力者を得る手段が「色仕掛け」というのはどうなのよ。「ゴルゴ13」は商売女だったっけ? 池上遼一の「傷負い人」や、藤木直人主演のNHKドラマ「喪服のランデブー」など、どういうわけでこう都合良く協力者が現れるんだよと思われる設定の源流はこのジャッカルあたりなのだろうか。

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