2018年4月7日土曜日

『ニュースの天才』-そら恐ろしい虚言癖

 人気記事を書きたくて、記事を捏造していた記者の話だと事前に知っていたから、意外な展開、というような驚きなしに観てしまったのは、いささか残念ではあった。
 記事の信憑性に疑いが生じていく過程で、これがどこまで意図的な捏造なのか、ただ裏をとることを怠っていたために情報の提供者の言うことを真に受けてしまっただけなのか、という決着の行方に、もうちょっと観客が迷う余地があった方が良かったが、それもまあ事前の知識があったためだろうか。
 どうも早々に、これは全部捏造なんだろうな、という感触があって、たぶんそれは映画製作者の意図的なものだ。捏造なんだろうに、なんでこいつはこんなに「ほんとだ。なんで信じてくれないんだ。」って、泣いてまで言い張るんだ、とむしろその虚言癖のそら恐ろしさに感じ入るのが正しい受け取り方なのかもしれない。
 展開を見せる映画的描写はすこぶるうまく、こういう映画が量産される米映画の層の厚さにはやはり感心してしまう。
 真実を追究するジャーナリズムの使命、などというテーマも、もちろん垣間見られはしたが、まあそちらに重きが置かれているわけではないようだ。
 それよりも、最初は記者たちから反感をかっている編集長が、主人公の捏造を暴く過程で自分の責任を果たそうと努める誠実さと、それを記者たちが認めていく展開が面白かったが、最後にその編集長の行いが拍手喝采で記者たちに認められてしまう極端さは、もしかしたら、そんなふうな美談もまた本当に真実かどうか疑わしいという皮肉なのかもしれない。
 だからうっかりその拍手にカタルシスを感じてはいけない。