2017年10月30日月曜日

『サンシャイン2057』-ボイルでもこういうのもある

 ダニー・ボイルだから、そう外しはすまいと思うが『ビーチ』のような微妙なのもあるしなあ、と危惧もあったが、結局のところ危惧どおりだった。
 衰えた太陽に地球上の核爆弾を集めて打ち込み、賦活化しようという計画のために宇宙を旅する宇宙船の中で…。なんだか聞いたような話だ。
 そしてそれ以上ではない。ひととおりのサスペンスもドラマもあるのはわかるが、どうにも何かを言う気にならない。どこかに心を揺さぶられるとかいうことは起こらなかった。
 そして最後の方は、カットが短すぎ、動きすぎで、もやは何が写っているのかわからない場面が続いて、参ってしまった。起こっていることの「だいたい」はわかるのだが、そんなものが「だいたい」わかってどうなるというのか。

2017年10月6日金曜日

『ピエロがお前を嘲笑う』-もったいない鑑賞

 TSUTAYAで物色中に、棚でフィーチャーされているのを見て衝動的に。
 これも『実験室KR13』に続いて、えらく良くできた映画だと感心。いちいちかっこよく見えるようライティングされた、手間のかかっていそうなカットが、贅沢なくらいのスピードで切り替えられていく。カメラも編集もずいぶん達者な映画だなあと思いつつ、肝心のお話は、あんまり頭を使わずに観ていて、後からいくつかの映画ブログを見て、あれこれ考えどころはあったんだな、とぼんやり。
 「どんでん返し」という宣伝文句をあんまり気に留めていなかったから、そういうふうに身構えていなくて、「返」されたときにも「騙されたあ!」などという感慨はなく、その物語の起伏に感心したのだった。
 いや、こういうのはもったいないな。もっと驚いたり悔しがったりして楽しむべきだな。
 『THE WAVE』に続いて、ドイツ映画だというがまるで米映画に見える。『WHO AM I』という原題も。ドイツでも英題で公開されたんだろうか?

2017年10月3日火曜日

『実験室KR13』-映画力と物語力のアンバランス

 『THE WAVE』同様の心理実験ものであるとともに『Unknown』同様のソリッド・シチュエーション・スリラーものでもある。どうしたって期待しちゃうじゃないか。
 ついでに「事実に基づく」ともいう。治験として集められた4人の男女が、殺風景な実験室に閉じ込められて、主催者から出題される問題を命がけで解く。これがCIAによる、実際に行われたかもしれない心理実験だったという設定だ。
 だが『es』や『THE WAVE』のように「実話」とストレートには言わない。見終わってみれば、まあそうだろうな、という感じだ。こんなことが実際に行われましたとはCIAは言うまい。それくらいに馬鹿げてはいる。
 だが観始めてすぐには、この緊迫感はなんだ、と感心する。役者の演技も編集も見事で、これは質の高い映画だ、と確信する。被験者の一人がいきなり撃ち殺される冒頭も、これには何かどんでん返しがあるんだろう、と思う。名優クレア・デュヴァルだ。こんなところで死んでおしまい、ということはなかろう。
 だが、おどろくべきことにそのままなのだ。そして明かされる真相も、呆れるようなトンデモ話なのだった。
 惜しい。実に惜しい。結末近くまでは大いに面白いと感じていたのに。ティモシー・ハットンの渋い男っぷりも、クロエ・セヴィニーの影のある美しさも、よく撮れているなあ、と感心していたのに。
 世界の裏側でどんな非道な謀略が行われていようとも、天下のCIAがこんな効果も怪しい実験に金と時間と人材を割いて自らの身を危険にさらすまい。どうしてこのネタで映画撮れると思ったんだろうか。
 で、監督のジョナサン・リーベスマンって? と思ったら『世界侵略: ロサンゼルス決戦』なのか!! あの、ものすごくよくできた場面場面の映画力に対して、まるで釣り合いのとれない貧弱な物語力は、この『実験室KR13』とおんなじだ。