2015年10月31日土曜日

『アルカトラズからの脱出』(監督:ドン・シーゲル)

 この間、題名を挙げたもののいまいち記憶がないなと思っていたのだが、観てみると、そもそも観た覚えがなかった。いや、記憶に残らなかっただけかもしれない。
 アルカトラズ刑務所からの脱獄映画だとは、題名から知れる。知っていて観ている。そのつもりで期待し、かつ名作と評判が高い映画なのだが、ひたすら地味だった。別に派手であってほしいというわけではない。でも、何を楽しめばいいのか。
 いや、考えれば「良い映画」的要素はいっぱいあったような気もする。キャラクターはそれぞれ立っているし、囚人同士の友情やら、憎たらしい所長の鼻を明かす爽快感もある。脱獄の計画の段階のサスペンスはもちろん丁寧に描かれている。
 にもかかわらず、結局、これで終わり!? 的なガッカリ感で終わった。言葉に挙げて数えられるほどには、それぞれの要素が面白さにつながっているように思えなかったのだ。脱獄にかける執念や、その能力の高さということなら『破獄』や、同じアルカトラズを舞台にした『ザ・ロック』の方がよほど見応えがあったし、刑務所での悲喜こもごもをドラマとして描くなら『ショーシャンクの空に』にはるかに及ばない。
 脱獄にともなうサスペンスがあった、といいつつ、どうにも計画がうまくいきすぎて呆気ないという感じがしてしまうところと、クリント・イーストウッドが、どうしても脱獄したいという動機を強く持っている人物に感じられない、というところに問題があるような。
 どうしても出たい、だが困難だ、という葛藤の原動力となる双方の力が、いずれも弱く感じたのだった。
 ドン・シーゲルとクリント・イーストウッドといえば『ダーティー・ハリー』だが、あれに比べてもよほど地味だ。

2015年10月27日火曜日

秋刀魚

 台湾の漁船が公海上で乱獲するから日本の近海で秋刀魚が不漁だと何度かニュースで見ていたので今年は機会がないかと思っていたら、まずまずの安い秋刀魚が出回っているので、今年も秋刀魚の煮物を作る。小ぶりのが5匹で200円くらいになったら。
 かつてレシピを見たことも、調味料の量をはかったこともないが、失敗したことがない。ぶつ切りにして圧力鍋に放り込み、醤油と味醂と砂糖と生姜で味付けして煮るだけ。骨まで柔らかくなってそのまま食べられる。
 うまい。

2015年10月19日月曜日

陽月メグミ という人

 連日の「永訣の朝」論はちょっと息切れして、お休み。

 先日、Esperanza SpaldingをYou-tubeで漁っていてこういう人にたどりついた。すごい。恐ろしいアマチュアがいる。関西の人みたいだが、関東に来る機会もあるらしいから、ちょっと情報を追いかけて、可能なら出かけてみようか。


2015年10月17日土曜日

『96時間/リベンジ』(原題: Taken 2)

 前作『96時間』も面白かったから、前向きな気持ちで見ることができた(後ろ向きな気持ちで観るのは、もう駄目だろうという予想を確認するために観るようなときだ)。
 良かった。期待を裏切らない出来だ。
 元CIAの特殊工作員、リーアム・ニーソン演ずるブライアンの強さはもうほとんどスティーブン・セガール並で、安心感があるのはいいのだが、ありすぎるとサスペンスがなくなる。だが基本的に、ストーリーの展開にサスペンスがあるから、「負けない」だろうとは思うが「間に合う」かどうかが、やはり観ていてドキドキする。楽しい。ドキドキさせながら、着実に敵を倒し、目的に向かっていく爽快感がある。途中、全くダレることのない緊密に構成されたストーリー展開は見事だった。
 この間の『ザ・バンク』で効果的だったイスタンブールの街並みは、ここでも味わい深い迷宮感を出していた。
 まあ、結末は予定調和で、何か凄いものを観たとか、感動的だったとかいうことはないのだが、確実に面白い映画を観た、という感じではある。
 リュック・ベッソンは、やっぱりはずさない。

2015年10月13日火曜日

「ハイキュー!」2期、Esperanza Spalding

去年の秋に熱弁した「ハイキュー!」の続編が放送開始。実はこの間に生徒に原作漫画を借りて、先まで展開を知っている。だからもうアニメーションによってその物語を味わうことができるかどうかだけが、先を見続けるかどうかの動機だ。1話を見る限り、やはりアニメーションは素晴らしい。ほとんど観るものがなかった前期に比べて、今期は『終物語』はじめ、いくつか期待。

 「ハイキュー!」同志の娘はまた、エスペランサ・スポルディング(Esperanza Spalding)の良さがわかる同志でもある。

2015年10月11日日曜日

『オブセッション ~歪んだ愛の果て』

 ネットで見た面白そうな映画の題名と混同して、観てしまった。作りがちゃちだとか、辻褄が合わなくてイライラするとかいうことはないのだが、面白かったとも言えない。思い込みの激しいストーカーにつきまとわれる恐怖、というただそれだけの映画。それとて『危険な情事』のグレン・クローズのように、ホラー映画として見られるくらいの熱演、演出でもあれば面白くもなろうに、お話としては去年観た『ルームメイト』と同じように、展開はまるで予想の範囲内で、演出に感嘆すべき点もない。
 主演はあのビヨンセだよなあ、と思っていると、公開時は全米1位のヒット映画なのだそうだ。まあビヨンセに興味はないので、映画は凡作という以上の感想はない。
 とすると、勘違いした方の映画は、はて、なんといったか。

2015年10月10日土曜日

『運命のボタン』(監督:リチャード・ケリー)

 ここ2~3年のうちに観たことは明瞭に覚えている。コメディかと思って観始めると意外とシリアスな話だったという記憶はある。ボタンをめぐる選択を迫られる話だった。大金が手に入るが、どこかで誰かが死ぬというボタンを押すかどうか?
 例によって、観たはずなのに先が読めないのは良い映画であったはずはないのに、そのことを確かめるためだけに観た。どのシーンも、まるで見覚えがない。だがその映画を一緒に観たことは娘も覚えている。この印象の薄さは何事だ。キャメロン・ディアスが主演で、明白にB級な映画だというわけではないというのに。
 じきに見覚えのあるシーンも出てきた。だがそれも単発で、とにかく先が読めない。次々と謎が提示され、風呂敷はひろがっていくばかり。どうなる? と思うと、まるで納得のないまま終わる。よく考えれば合理的な説明はつくのか? 多分つかない。キリスト教的な寓意があるとはネット上の解釈に見られるが、まあそれを認めるとしても、映画として細部が納得いくほどの整合性をもっているとは到底認められない。
 これもまた、完成に至るまでどうして最後まで誰も止めなかったのか不思議な映画だ。

2015年10月3日土曜日

『ノロイ』(監督:白石晃士)

 『オカルト』に続いてもう一本、白石晃士。『オカルト』の前作らしいが、なるほど、「モキュメンタリー」という形式についての試行錯誤の最中、という感じで、『オカルト』でその成果が発揮されるとして、まだまだ『ブレアウィッチ・プロジェクト』の真似をしてみました、という域を出ない。
 「実話」だという話を半信半疑で見たりするともっと面白いんだろうが、もうすっかりフェイク・ドキュメンタリーを見るつもりでいるから、そうしたジャンルとして、またホラーとしての出来だけが評価の対象となる。
 とすればまあ凡作。好きな人は高評価をしているが、アマゾンでは星一つ評価が最も多い。駄作、と口を極めてののしるほどではないと思う。面白さはともかく、頭が悪くて腹立たしい映画も多い中で、やろうとしている方向は見えていた。
 『オカルト』よりは怖かったが、だからといってそれで楽しかったというわけでもない。ホラーの恐怖は基本的には解消して欲しい。それが素直なカタルシスというものだ。