2023年6月28日水曜日

『クロール 凶暴領域』-強い父娘

 『ハイテンション』のアレクサンドル・アジャのハリウッド作ということで、興味がないこともないが、ワニパニックものだとはわかっているので、それほど優先順位は高くなかった。

 ハリケーンの到来で、破壊的な雨風による危機と、河川の決壊による家屋の水没という物理的な危機が迫る中で、下水管を伝って入ったらしいワニと地下室に閉じ込められる。予想される怖さは充分ある。ワニと闘ってどうにかなりはしないから、いかに微妙に人間とワニを分離するかがポイントで、こういう敵との力の不均衡はもちろんサスペンスの原動力でもあるが、設定としてマイナスにもなる。

 そういう意味では難しいストーリーテリングだったと思うが、うまく作ってある。飽きさせないサスペンスが連続する。

 が、父娘の協力というのがいまいち乗れなかった。これもアメリカ的なモチーフで、日本人にはどうにも共感しにくいのだった。強い父親像も、強い娘像も。