縁あって、インディーの本作を観る機会があった。
何やらの映画祭で多数の受賞歴があるというし、村田雄浩と近藤芳正というベテランを引っ張り出して、小品でも佳作であることを期待したのだが、どうも手放しで面白かったとは言いがたい。
高評価はたぶん、何やらヒューマンな良い話ということになっているんだろうが、それはまあそう思う。最後に関係者が集まって、なんだか良い感じに和解する大団円的な展開は山田太一みたいだ。
だが全体としてそれほどの作品と思えなかったのは、題名の「事実無根」とキャッチコピーにある「嘘に翻弄された」が予想されるテーマの掘り下げがまるで弱いことだ。二人の男の「嘘に翻弄された」過去が描かれるのだが、例えば村田雄浩の「冤罪」事件も、思わせぶりに相手が登場して、何か事情がありそうだとは描くのに、結局どうだったのかはわからない。「事実無根」などという事態が、本当に「無根」なのか、どうだと「無根」なのかとかいうのはなかなかに難しい問題なはずだと思ってしまうのに、そういう掘り下げがないまま、どうやら本当に、単に「無根」だと描いているようなのだ。だとしたら、職を追われるような重大事なのだから、裁判で争うべきで、そうなるとその「無根」に潜む微妙さが明らかに(あるいはますます不明確に)なっていくはずなのに、そんな展開はまるでない。じゃあ思わせぶりな題名と宣伝文句は何なんだ。
テーマの掘り下げが弱いところに強い人間ドラマが生まれるはずもなく、何となく良い話、的なぬるいムードが流れて終わる。ドラマとしても根が無い。