2年前の放送だが、今のところ坂元裕二の連続テレビドラマとしては最新作。
2話の途中まで気づかずにいたので、最初のところを観るまではと、録画したものの2年間未見だった『初恋の悪魔』が、ようやくアマプラに挙がったのでとうとう見始めた。見始めるにあたって娘を誘って、1話を観たところで、この後は一緒に観ることにした。
演出が坂元裕二作品をいくつも手がけている水田伸生なのは安心だが、1話を見る限り微妙なぎこちなさもある。松岡茉優の真顔は『最高の教師』でやりすぎだと感じていたが、これもちょっと。
主人公グループが謎解きをする際の、現場の中にバーチャルに登場して歩き回りながら真相を推理する演出はテレビ的には売りなのかもしれないが、『不適切にもほどがある』のミュージカルシーン同様、それが楽しくて、というほどの魅力はなかった。それよりもリビングでくり広げられる4人のやりとりだけで魅力は十分。例えば登場人物二人が同時に、反対方向に首をかしげる「お芝居」的演出でくすぐるところはやはりよくできている。
さて、毎回、事件を解決するドタバタのミステリーシリーズなのかと思いきや、後半に入って、通して設定されている大きな事件が主人公たちを大きく動かしていく。その引きの強さに、にわかにのめりこんで、後半は一晩に3話、2話と続けて観た。それぞれに映画1本分の長さの鑑賞は、世界への没入感も強く、幸せな視聴体験だった。
松岡茉優のヒロインが二重人格で、仲野太賀と林遣都の間でそれぞれに関係を作るのだが、これは一体どう終われば納得いくエンディングなのかと気になる。真面目で生きにくい林遣都演ずる鹿浜のキャラクターが実に愛おしいのだが、こちらと相対するヒロインの人格の方が「副」という設定で、最終話で、消える前に最後に鹿浜に会いに来るという、ある意味ではベタとはいえ、実にもうどうしようもなく切ないエピソードを、どう描くか、見物だった。
で、これはもう最高に良くできた脚本と演出だった。本当に切なく、でも単に悲劇にばかり描いてはその後の日常に差し障りがあるから、ぎりぎりのところで軽くバランスを取る。
『大豆田とわ子』の面白さの完成度は驚嘆するほどだったが、その世界に観る者を引き込んでとどめてしまう強さは本作の方が強かった。それだけ濃密な感情を味わった。