2019年2月24日日曜日

『トランス・ワールド』-SSS低予算映画の佳品

 森の中の小屋に迷い込んだ3人の男女。森から出ることもできず、過ごすうち、3人の関係が徐々に明らかになる。クローズドサークルのSSSということで、事前情報まるで無しで借りてきた。
 低予算映画らしい舞台限定の中でも、森の中の小屋というシチュエーションはとりわけ安上がりにできる。だがこの安っぽさはマイナス要因ではない。寒々しい雲の垂れ込めた森の雰囲気は悪くないし、脚本さえ練れていれば、映画は面白くなるのだ。
 物語の大ネタが、最近読んだ辻村深月の「かがみの孤城」と重なったのは偶然とはいえ驚いた。そこが核心で、あとはそれにむけてどうネタをちりばめていくかが、この手のSSSの力の入れどころ。
 観終わった直後は、もっとあれこれ盛り込めそうな設定なのに惜しい、と思ったのだが、早送りで最初から辿ってみるとそういえばあれこれと伏線が張ってあることにあらためて気づき、評価もだいぶん上がった。
 それにしても苦しい邦題。原題の『Enter Nowhere』でも、邦訳して『出口なし』でもジャンルがわからんし、といってどう付けたらいいものか思案してしまう、というのはわからなくもないが。

2019年2月14日木曜日

『エクスペンダブルズ3』-まずまず

 1.2と観てきたので落とし前をつける意味で。
 印象としては2の方が密度が高かった気がするが、3も悪くはない、とも思った。相変わらず、言うのも馬鹿馬鹿しいほどの人命軽視と、あちらの弾は決してこちらにはあたらないという不合理を見ないことにすれば。
 ただ、1,2の時の、おお、この人も出てくるのか! という高揚感(というかやり過ぎ感)がもう感じられなくなって残念。ハリソン・フォードとメル・ギブソンは、この映画の売りである「廃用品」的な扱いとは感じられなくて、最初からそういう映画、という感じになってしまう。
 もっとも初登場のアントニオ・バンデラスはハイテンションが面白いキャラクターで、大いに成功しているが。出てくるだけでクスリと笑えてしまう。
 ともあれ、ラストのビルの爆発から間一髪で逃れる緊迫感などはやはりよくできていると言って良い。

2019年2月11日月曜日

『ロング・グッドバイ』-楽しみ方がわからない

 名高いハードボイルドの名高い映画版。あちこちで言及されてはいるので観た気になっていたがやっぱり観たことなかった。
 終わりまで観て呆気にとられる。どう観れば良いのかわからない。
 菊地成孔と伊集院光の対談でこの映画の見方について教わった。なるほど、物語の結構などを考えてはいけないのだ、と。
 そう思えば、夜の海はドキドキしたし、ラスト近くのメキシコの並木道も良かった。エリオット・グールドが歩いてくるだけでも良いし、遠ざかって行く途中ですれ違うおばあさんとワンステップ踊るところも、映画的に見事な絵作りだ。
 それでも、原作にあるという友情が描かれない映画の「物語」に、何を見いだせば良いのか。70年代的ニューシネマ的頽廃? わからん。

2019年2月10日日曜日

『ブラッド・ワーク』-意外と真っ当なミステリー

 クリント・イーストウッド監督・主演だというのだが、知らなかった。というか、あらためて調べるとイーストウッドって、監督としてこんなに撮ってるのかと驚く数の作品があるではないか。有名どころばかりでなく。
 犯人から警察、というかFBIの特定捜査官への挑戦状つき連続殺人事件があって、その捜査官がイーストウッドだというから『ダーティー・ハリー』かと思っていると、意外なほど真っ当なミステリーとして展開していく(パズラーではないが)。サイコスリラーというより。
 捜査に従って事件の様相が明らかになるにつれ、意外な展開になっていく。サスペンスたっぷりに犯人との対決があって…と堂々たる娯楽作なんだが、ラブロマンスはやり過ぎだとも思う。必要?