2019年2月24日日曜日

『トランス・ワールド』-SSS低予算映画の佳品

 森の中の小屋に迷い込んだ3人の男女。森から出ることもできず、過ごすうち、3人の関係が徐々に明らかになる。クローズドサークルのSSSということで、事前情報まるで無しで借りてきた。
 低予算映画らしい舞台限定の中でも、森の中の小屋というシチュエーションはとりわけ安上がりにできる。だがこの安っぽさはマイナス要因ではない。寒々しい雲の垂れ込めた森の雰囲気は悪くないし、脚本さえ練れていれば、映画は面白くなるのだ。
 物語の大ネタが、最近読んだ辻村深月の「かがみの孤城」と重なったのは偶然とはいえ驚いた。そこが核心で、あとはそれにむけてどうネタをちりばめていくかが、この手のSSSの力の入れどころ。
 観終わった直後は、もっとあれこれ盛り込めそうな設定なのに惜しい、と思ったのだが、早送りで最初から辿ってみるとそういえばあれこれと伏線が張ってあることにあらためて気づき、評価もだいぶん上がった。
 それにしても苦しい邦題。原題の『Enter Nowhere』でも、邦訳して『出口なし』でもジャンルがわからんし、といってどう付けたらいいものか思案してしまう、というのはわからなくもないが。

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