2022年10月31日月曜日

『涼宮ハルヒの消失』-13年を挟んで

 13年前の劇場公開の時は、当時の「ハルヒ」同志である中学生の息子と電車で上映館まで出かけて観た。そんな状況もあってあまり公平に評価できるわけではない。

 とりあえず原作には当時大いに熱狂した。面白くて感動的。夜遅い時刻に読み始めて、やめられなくなって夜明け近くに読了という。

 テレビシリーズ2シーズンの放送中に、かの悪名高き「エンドレス・エイト」の終わり頃に、これは『消失』が映画になるってことなんだと予測したらその通りになった発表の時にも快哉を叫んだものだ。

 今回はアマプラの見放題終了という、何の文脈もない見直しなのだが、途中でテレビ放送もなかった(か知らなかった)のでまったくの13年ぶり。

 最初しばらくは、13年前の京アニは、意外と普通のアニメだったんだなあ、と思った。印象では劇場版ならではの密度だったような記憶なのだが。

 13年前というのはガラケーで、劇中でも「古い」パソコンがブラウン管でwindows95という時代だった(今では「古い」ことを描こうとしてももはや通じまい)。アニメの古さと劇中の古さが合っていた。

 だが世界が改変された後の世界に入って、不穏な空気とともに、朝倉が教室に入ってくる緊迫感から俄然テンションが上がり、アニメ的にも密度が上がった。正直、頭の辺りを見直そうと思っただけだったのだが、やめられなくなって、2時間半以上の映画を全編観てしまったのだった。

 13年前に劇場で観たときには、正直、原作を読んだ時ほどの興奮はないなあと思ったのだが、13年振りだと原作を読んだときの高揚感がまた再現されて、やはりすごい話、すごい映画だった。


2022年10月30日日曜日

『埋もれる殺意 39年目の真実』

 さらに今度はイギリス。ミステリーではあるが、警察物なので、謎が解けるというよりは、捜査によって真相がわかっていく、というだけで、本格物ではない。映画でもなく、先日観たのと同じテレビシリーズ

 感想は前のと変わらない。

 こういうのを観る快感ってなんなんだろうな。

『ロスト・ボディ』-後味が良くない

 フランスのミステリーの次はスペインのミステリー映画。これもまたハリウッドっぽい。誰かの陰謀なのかオカルトなのかわからず話が進む。途中に挿入される登場人物の悲劇的な背景が、最後にきてちゃんと事件の伏線として収まる。見事な作りだとは思うが、どうも登場人物たちが好きになれない。同情に値する犯人でさえ、好意的には共感できず、あまり後味は良くない。

2022年10月23日日曜日

『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』-バランス感覚

 映画館の予告で気になっていたフレンチミステリー。

 ベストセラーの続編を各国同時に発売するためにそれぞれの言語の翻訳家を集め、監禁して翻訳させるが、なぜかネットに流出して…という展開は魅力的。そこにとてもよくできたどんでん返しが用意されたミステリー映画ではある。

 テイストはハリウッドだが、妙に深刻な感情の発露が描かれるのはフランス映画ならではなのだろうか。それがどうもノイズになって楽しめない。

 例えば、流出を阻むために次第に無茶なことをし始める出版社長についていけない。損害を避けるためとはいえ人殺しまでしてしまって、それをどう隠すのかよくわからない。

 そこにさらに登場人物の一人の「創作者としての悩み」が深刻に描かれるのだが、それが事件の展開そのものにかかわる。

 そうした感情の深刻さが、コン・ゲーム的なミステリーの味わいとは馴染みがたく、どうもそのバランスについていけない。

2022年10月22日土曜日

『漁港の肉子ちゃん』-愚かで無垢な

 アニメ的なレベルは高い。監督の渡辺歩は「ドラえもん」映画のどれかを観ているようではあるが、監督を覚えているようなものはなく、『海獣の子供』はまだ観ていない。ただSTUDIO 4℃の制作となれば品質は高いに決まっている。
  となればこれは「アニメのクオリティは高いけれど」のパターンか、と予想されると、果たしてそのとおりなのだった。 
 この「肉子」のような、愚かで無垢というキャラクターが総じて苦手だという思いは、最近とみに各クールの新作アニメを見るたびに意識される。その手のアニメでは「愚かで無垢」で「可愛い」女の子が主人公のことがしばしばあり、面白そうな話だと思ってしばらく観ようかと思っていても、そのうちそこに嫌気がさしてやめてしまう。 

2022年10月1日土曜日

2022年第3クール(7-10)のアニメ

『継母の連れ子が元カノだった』

 録りためてしまうものと毎週消化するのに分かれるのだが、毎週消化するものの中でこれが最初に最終回を迎えた。

 アニメ的には特筆すべきものはなく、お話が特段良かったというのではないが、本好きな若者の不器用なやりとりが微笑ましかった。


『リコリス・リコイル』

 安済知佳は『刻刻』の主人公でもあったし、他にもいくつかの作品で知っているはずだが、意識したのは『さんかく窓の外側は夜』の女子高生役が素晴らしかったからだ。そして本作ではまた一層の素晴らしさに毎回感心した。感情表現の豊かさと軽やかさ。

 作画も一貫してレベルが高いままで、スピード感もリズム感も緻密に演出されている。


『よふかしのうた』

 夜更かしのワクワク感を感じさせた1話に感動して見続けたが、それほどドラマが展開するでもなく、後半はどんどん盛り下がった。通して、夜空・星空の美しさは出色だったが。


『サマータイムレンダ』

 2クールで完結して、なおかつそれが3日ほどの間を何度も繰り返すだけで、最終回は、初回と同じ日を、全て大団円になった上でもう一度繰り返すという構成の妙に感心した。タイムリープを駆使したパズル的な知恵比べも見応えがあった。

 ただ、やたらと誰が好きだという要素が強調されるところが、かなり鬱陶しかった。


『ユーレイデコ』

 『攻殻機動隊SCS』の脚本をやっていた佐藤大と湯浅政明の企画ということで期待した。最初のあたりはビジュアルイメージもアクションもレベルが高いと感じたが、世界観はポップにした『電脳コイル』の二番煎じという感じで、そうなるとレベルの落ちてきた中盤からはワクワクもしなくなっていって、残念な終盤だった。


『メイドインアビス』

 劇場版の鬱展開もなかなかのものだったが、物語的に劇場版に続く本作第2シーズンも、そうそうにそういう気配があって、長らくHDに溜めたまま手を付けずにいた。

 半年近くなってようやく通しで観たのだが、やはり辛い描写が続く。だがアニメーションのレベルは高いまま、そして強いドラマ性を保ったまま1クール12話を完結した。悲劇の中で主人公の揺るぎない前向きさが凄い。


『異世界おじさん』が途中から再放送になってしまうのはコロナの影響らしい。来シーズンの再放送、完結に期待。

『惑星のさみだれ』は、アニメ化がニュースになったときに我が家で湧いたのだが、始まってみるとあまりのアニメのレベルの低さにがっかりし続け、それでも1クール観て、2クールものだとわかったところで脱落。