2024年8月26日月曜日

この1年に観た映画・ドラマ 2023-2024

 昨年の「この1年」からここまで、31本の映画しか観ていない。ブログ開設から10年で、こんなに映画を観ていない1年はない。原因はわかっている。単に忙しかったのだ。夜も休日も、映画を観るほどのまとまった時間をとれないことが多かったのだ。

 だがこの先はそれも一段落して通常運転になる予定。

 というわけで10本を選ぶのが難しい。ある程度の強度を持った印象が残ったものをあげてみよう。何本になるか。


10/9『リチャード・ジュエル』-間然するところない

1/3『地球外少年少女』-圧倒的

2/12『グリッドマン・ユニバース』-胸熱

2/23『劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』-高校の部活動

3/20『一秒先の彼女』-幸せに満ちた

6/10『ザ・ファブル』『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』-アクション


 6本というか7本というか。例年は10本を選んだうえで、迷ったものを次点としてなお10本選ぶこともできたのだが、この1年はこれ以外の作品を挙げたいという気にもならない。

 珍しいことには洋画が1本しかない。むしろ例年は邦画が10本中1本くらいだったりするのに。

 さてその洋画はクリント・イーストウッド作品で、あまりにもう当然のような手堅さで驚きも新鮮さも少ない。

 テレビアニメのシリーズから評価の高かったものの劇場版3作も想定内だし、磯光雄の作は期待以上とも言えたが、期待の延長とも言える。

 とはいえ、評価の高さということでこの『地球外少年少女』が頭一つ抜けていて、驚きという点では『一秒先の彼女』が新鮮な印象と、幸せで懐かしい鑑賞体験として残る。 


 31本の映画にはなんだかテレビドラマっぽいものも多かったのだが、一方でテレビドラマにも、昨年度の「大豆田とわ子と三人の元夫」「最高の教師」「エルピス」のような圧倒や熱狂はなかった。話題作の『VIVANT』にもあまりのれなかった。


 次の1年に期待ということで以下、列挙。


10/1 『こころ』-絵解き

10/9 『リチャード・ジュエル』-間然するところない

9/19『VIVANT』-萎える

11/5『バンクシー 抗うものたちのアート革命』-さまざまな問い

11/25『騙し絵の牙』-テレビドラマでいい

12/2『スポットライト 世紀のスクープ』-アメリカ社会にとって

12/3『春の一族』

12/23『時をかけるな、恋人たち』

1/3『地球外少年少女』-圧倒的

2/4『ラン・オールナイト』-気楽

2/12『グリッドマン・ユニバース』-胸熱

2/22『チップス先生さようなら』-長い間

2/23『劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』-高校の部活動

2/23『今朝の秋』-ドラマの力

2/25『ベイビーわるきゅーれ』『最強殺し屋伝説国岡』-オフビートな

2/26『レヴェナント:蘇えりし者』-大自然

3/2『スウィング・オブ・ザ・デッド』-低予算ゾンビ映画

3/20『一秒先の彼女』-幸せに満ちた

3/23『ビューティフル・マインド』-高評価の訳

4/1『高速を降りたら』『ケの日のケケケ』『ある日、下北沢で』『島根マルチバース伝』

4/17『すずめの戸締まり』-「なかったこと」

5/1『コーダ あいのうた』-予想内

6/9『蜜蜂と遠雷』-音楽を描く

6/10『ザ・ファブル』『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』-アクション

6/11『ザリガニの鳴くところ』-湿地

6/14『約束』-日本産警察ドラマ

6/15『TENNET』-辻褄

6/16『早朝始発の殺風景』-日常系ミステリー

7/1『6人の女 ワケアリなわたしたち』-良質な海外ドラマ

7/17『エマ 人工警察官』-テレビドラマ?

7/19『マリグナント』-アドバンテージが消えて

8/9『禁じられた遊び』

8/11『ハミルトン』-見応え

8/13『青鬼2.0』-努力のリソース

8/15『Pearl』『X』-閉塞感

8/16『岸部露伴ルーブルへ行く』-テレビドラマ画質

8/23『黄龍の村』-もったいない


2024年8月23日金曜日

『黄龍の村』-もったいない

 清水崇の「村」シリーズかと勘違いして観始めた。

 冒頭の若者グループが田舎に行くくだりはまるで「キャビン」物の定番。それなりにその不快さがリアルに撮れてもいるが不必要に長い。例えばそこに何か伏線を張っておくとかいう知恵を使ったような脚本構成はない(主人公についてだけいくらか意味ありげに描写しているが)。

 ホラーを観るつもりで観ているが、オカルトかどうかはわからないで観ていると、「キャビン」物ではなく「村」物だった。「ミッドサマー」的な。

 そうなれば脱出の過程が描かれるのだろうと予想していると、なんと突然アクション映画になる。で、最初のうちは目立たなかったが、『最強殺し屋伝説国岡』の役者だよなあと思っていたのが主人公なのだとわかり、あれっと気づく。阪元裕吾の映画なのだった。

 であとはそういうアクション映画。『ベイビーわるきゅーれ』はそれなりに手のかかったアクションを見せたが、『国岡』もこれも、リアリティの水準が低く、そこで楽しむには難しい。例えば言い打撃が入るとそれで一気に形勢が決まってしまうことになるので、そういう打撃を安易に描いてはならない。描かれる格闘が軽く感じられてしまう。

 だがこれが意外な高評価なのだ。清水崇の他の「村」シリーズより(だから観てみたのだ)。レビューを見ると、なるほどみんなわかっていて、突っ込みながら見ることが楽しいと言っているのだ。その突っ込みどころに不快をより多く感じてしまう人は低評価をする。どちらもそれなりにわかる。

 細かいところがあまりに考えなしに作られているのは、せっかく映画という大がかりな制作物を世に出すにあたってはもったいなあと思う。

2024年8月16日金曜日

『岸部露伴ルーブルへ行く』-テレビドラマ画質

 放送されていたテレビシリーズは見ていない。が、個人的なオススメもあって観てみようかと。原作についての事前情報も愛着もなく、もちろん高橋一生のファンでもない。それでも観られるか。

 謎で引っ張っていくストーリーや、ルーブル美術館の地下倉庫などという設定はなかなか見応えもある。木村文乃は綺麗だ。

 だがまあヘブンズ・ドアーは別にどうということもないし、岸部露伴のふてぶてしいキャラクターが魅力的だということで惹かれるというものでもない。

 うーん、新しい世界は開かなかったな。

 それにしてもなぜ劇場版なのに、画面はテレビドラマ画質なのだろう。テレビマンのこだわりか。

2024年8月15日木曜日

『Pearl』『X』-閉塞感

 とにかくホラーを観たくて、アマプラのリコメンドで☆4つあるものを、何の事前情報もなく。

 画面のつくりは映画的にすこぶる質が高い。トウモロコシ畑の向こうに案山子が立っている広い画角の画面などに漂う不穏な空気が良い。案山子がかけられている竿(十字架のような)にヒロインが上っていって、案山子と向き合う画も、どうしてそれを思いついたのかわからないが、画面に表れると不穏な一枚絵なのだ。タイ・ウェストという監督、なかなかただ者ではない。

 1918のアメリカの田舎町が舞台という特殊性が何のためなのかと思っていると、ヒロインの閉塞感を用意するためなのだとわかってくる(だが後からそれはちょっと違う事情があったのだとわかる。先に80年代を舞台にした映画が作られていて、その主人公の前日譚だったのだ)。

 どのあたりがホラーなのかと思っていると、そのうちサイコ・サスペンスなのだとわかる。ヒロインの狂気が怖いのだと。主演のミア・ゴスの、微妙な美人さ加減が絶妙で、それなりに可愛いとも言えるからスターになることを夢見ることが観客にとって許されるが、やさぐれた感じはサイコな怖さへつながっていくのに説得力もある。

 とりわけ、最後のシーンで、戦地から帰った夫にきつい化粧で笑いかける笑顔が、ストップモーションではなくそのままアップで映されたまま、スタッフロールが流れる。3分余り瞬きもせずに笑い続けるヒロインは、瞬きもしないからか涙を流しはじめるが、そのまま引きつった笑いを映し続ける。

 ここが、ブラックな笑いを伴いつつ一番怖い。


 全日譚の『X』は跳ばし跳ばし。『Pearl』が持っている絶望感や閉塞感のような独特の味わいはない。シンプルで気色の悪いホラー。


2024年8月13日火曜日

『青鬼2.0』-努力のリソース

 こういう映画に期待することは全くできない。

 だが最初のあたりで画面の切り取り方や編集のテンポに、おっ、と思ったりもした。これはそれなりの映画なのか?

 いやどんどん、やはりそんなことはないのだとわかってくる。CGがちゃちいのは予算の問題だから仕方ないのかもしれないが、ホラーは人間ドラマであってこそ怖いのだ。ちゃんと演出して、それぞれのキャラクターを生きた人間にしてほしい。

 あるいは努力のリソースが最初のあたりで尽きてしまったということかもしれないが。

2024年8月11日日曜日

『ハミルトン』-見応え

 ミュージカルのブロードウェイ公演を撮影したものが、劇場映画という体で公開されたもの。

 とにかく全編、歌。そのままお芝居として台詞はほぼない。メロディーがない部分はいくらかラップに近い。そう、音楽的にはヒップホップを大胆に取り入れているところがミュージカルとして特徴的なのだそうだ。だが、音楽的にはR&Bやポップスもシームレスに含んだアレンジで、劇的な「ミュージカル」として演奏されている。その演奏は、ダンスも、俳優陣の歌唱力もあいまって、圧倒的だ。1曲ずつ、会場から湧き起こる拍手は、そのまま映画を観る観客の感情の表出でもある。

 アメリカ建国を巡るドラマももちろん見応えがあって、こういうミュージカルなら見応えはある。

 もちろん、ドラマはドラマ、音楽なら音楽コンサートでいいのだが。

2024年8月9日金曜日

『禁じられた遊び』-平田秀夫クオリティ

  ルネ・クレマンではない。たまたま図書室で見つけた原作小説を、帯文句につられて借りてきて、アマプラに映画版が挙がっているのを見つけて、雰囲気だけでもつかもうと思ったが、そのまま見通してしまった。見終わってから知ったのだったが、中田秀夫だった。なるほど。やはり。この低レベルの映画づくりは。

 それぞれの演者に才能がないわけではないはずだ。別の映画ではそれなりの演技をしているのをみたことがないでもない。だが、演出のレベルに合わせて演技のレベルが下がるのは不思議なものだ。まったく型通りの感情の表出をするが、リアリティはない、という。

 ホラーとしても特段観るところもない。