だがつまらないのだった。観るのが不快なほどではない。というか手堅くも好印象、といった感じではある。だが、面白かったとはいえない。
だが世評は好意的だという。宇多丸が褒めてる。
それはもちろん『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』『アッパレ!戦国大合戦』が名作であることは言を俟たない。
だが『河童のクゥと夏休み』は、期待が大きかっただけにいささか肩すかしの感があったのは否めないし、『カラフル』は、もうはっきりとつまらなかった。アニメーションの技術も演出も手堅く高レベルでまとめてくるのに、面白くはない(とはいえ『カラフル』は下記のような理由で「つまらない」というよりも、納得できない演出に違和感を覚えたのだった。それは「しんちゃん」映画では看過してもよく、それ以外の部分で感動させるから瑕疵とはならないのだが、リアリティを追求するタイプのこういった映画では致命的になる、といった違和感だった)。
『はじまりのみち』も、浜田岳のキャラクターは良かったとか、主人公が母の顔の泥を拭うシーンは感動的だったとか、そこを褒めるなら異論はない、といった感じではある。だが全体として面白いとは言いかねる。どこを面白さとして提示するつもりなのかがわからん。脚本の段階で、どこかが面白くなりそうだという自信があったのだろうか。
おそらく、リヤカーで病人を運ぶという「試練」と、木下恵介の映画監督としての再生を重ね合わすという狙いにその期待が担わされているのだろう。だが、どちらもまったく予想の範囲を下回る盛り上がり具合で、だからどうだということもなかったのだった。例えばキリストがゴルゴダの丘まで自らの掛かる十字架を運ぶ、ただそれだけの映画である『パッション』の、そこに込められた熱量などまったく感じられない。そもそも比較が無茶か?
そうでなくとも、はっきりと意図してこれでもかと引用される木下作品が、どれもこれも本編よりも魅力的なのも困ったものだった。
というわけで
三角締めでつかまえてには共感しがたく、
『はじまりのみち』は敗北の映画であるに納得したのだった。