2016年3月30日水曜日

『0:34』(原題:『Creep』) 監督:クリストファー・スミス

 TSUTAYAでDVDを借りて観たのだが、まあ期待はしていなかった。ただ『トライアングル』が大のお気に入りなので、同じ監督が作った映画を観てみたいという興味からだった。
 結果としては残念な映画ではある。が、腹立たしい映画だというわけではない。いや、ネットでは主人公の行動がいちいち腹立たしいという感想も散見されるが、それを否定はしないものの、大きな瑕疵ではないとも思えた。それよりは地下鉄にいる殺人鬼との攻防という設定でやれることをやりつくしていると評価できるほどのアイデアは盛り込まれていないことが残念だった。
 それでも、最終電車が出た後の地下鉄のホームに取り残されて、地上に出るシャッターが閉められてしまい、人気のない地下鉄構内をうろつくという不安感がもう得難い魅力ではある。むしろ形のある殺人鬼が不必要に思われてきさえするくらいだ。
 それからラストで、生き残った主人公がホームレスに間違われる件の描写は、本当にうまいと思う。まだあるかと思わせてがらりと空気を変えて、日常の戻ってきた地下鉄を描く。生死をくぐり抜けてきた主人公のいる場所と地下鉄の乗客のいる場所の落差の大きさが、目眩のような違和感を感じさせる。見事だった。

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