2016年12月16日金曜日

『アパートの鍵貸します』 -すごいのに楽しめない

 巨匠ウィリアム・ワイラーだ。上手い映画だとはわかっている。
 だが、ジャック・レモンの哀愁溢れる演技とかいうのに、どうも世評に言われるほどの魅力を感じない。
 シャーリー・マクレーンが可愛いのは認める。だが不倫の果てにあっさり自殺未遂をするに至るほどの葛藤が描かれているように感じない。
 一方にコメディ映画としてのスタイルを保ちつつ、そうした深刻さが同居している物語をどう受け取って良いのか。当惑したまま観終えてしまった。
 それはたぶん、アメリカ映画というものに対するリテラシーの問題なのだろうとは思う。そもそもの設定である、上司の不倫のホテル代わりにアパートを貸す、という設定についていけない。大学生の友達くらいなら、そのどろどろした葛藤についても想像が及ぶ。だが大企業の管理職が、部下のアパートをホテル代わりに使うことが、どうして相手の女性に受け入れられているのかがわからない。「ボロアパート」という形容から、そうした女性にとっても、そこが密会の場所として満足できるものではないらしいことがうかがわれるのに、どうして6人もの上司がそうした習慣を実行しているという物語を受け入れられるのだろう。それが「そういうこともある」ことなのか、「異常なこと」なのかがどうもよくわからない。
 ラストのハッピーエンドがどうもハッピーに感じられずに、どうも後味が悪い。

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