2017年1月20日金曜日

『シカゴ』 -ミュージカル仕様

 物語を享受する際、基本的に、お話の文脈を追うのが主たる受容態度ということになってしまうのだろう。ミュージカルは苦手だ。歌やダンスをそれ自体で楽しむということができず、お話が展開しない時間がもどかしくなってしまう。
 観ながら、これがアカデミー作品賞? と思ってしまい、だがそれでも見続けているとそれも納得だと思い直す。音楽やダンスが見事なのは無論だが、それを映すカメラワーク、現実のドラマとの交錯を挿入する編集、映画としてのうまさにはやはり舌を巻く。
 それでも特に楽しいとか感動するとかいう感情が湧かない。キャサリン・ゼタ・ジョーンズだって、『幸せのレシピ』の時の魅力はないし(にもかかわらずのアカデミー助演女優賞)、主人公のレネー・ゼルウィガーに好意的にもなれない。ああいうのがコケティッシュで魅力的に見えるものなのか?
 成功に取り憑かれた、それもとりわけショービジネスの世界でのサクセスに貪欲なのは、やっぱりアメリカの病理だよなあ、と思う。あれで、殺されてしまった男に対する同情はないのか? もちろん痛い目に遭うのは同情の余地がないが、といって殺されるほど? そこいらあたりが、物語のリアリティがミュージカル仕様なのだった。法廷劇としてももちろん見られはしない。あくまでミュージカル仕様。マスコミとそれに踊らされる大衆批判、とかいうテーマも、本気とは思えない。
 映画館で、さあ、ショーを楽しむぞ、という構えで観ると楽しめる映画体験になるのだろう。録画したテレビ放送を、分割して見たりするもんじゃない。

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