NHKの番組の合間に、ずいぶんとかまびすしく宣伝をするのだが、まあ鶴巻和哉だし、スタジオカラーだし、とりあえずちょっと。
と思って最初の海戦のアニメーションがあまりに良くできているので興奮して、一人で観るのもなんだし、娘を誘って、録画した前後編を通しで観た。
アニメーションは、1時間半の最後までクオリティを落とすことなく、テレビアニメのレベルじゃないだろ、これ、という出来だった。
が、面白かったとか感動したとかいうことがあるかというと、そんなこともない。
それはやっぱり脚本の問題なのだ。舞城王太郎は未読で、例の「文圧」を味わっていないうちに評価するのは保留にすべきだが、とりあえずこのお話に関してはだめだった。
そもそも龍の歯を通して死者が生まれ変わるという設定の必然性がわからない。合理的であらねばといっているわけではなく、その面白さがわからないのだ。
龍という存在のいる世界はいい。龍はあまりに偉大で神秘的で、何やら「世界」のメタファーのようでもある。その歯に湧く虫歯菌を退治するのが「龍の歯医者」と呼ばれる職人集団の設定もやはり何やらのメタファーじみている。彼らは皆、一度死んで龍の歯から生まれ変わったという。何やらメタファーだか象徴だかに満ちているような気もするが、何のことかわからない。さりとてわからないなりに惹かれるものがあるというわけでもない。村上春樹がそうであるようには。
さらにそれが龍の歯医者になるためには、もう一度生まれ変わる儀式のようなものを経るのだが、その二重の生まれ変わりにも何の意味があるのやらまたしてもわからない。そのわからなさは、何か深いものがあるのだろうという感触を感じさせないで、単に腑に落ちない気持ち悪さだけがあるのだ。
全体に宮崎駿の『もののけ姫』と細田守の『ぼくらのウォーゲーム』感が満載だったが、この食い合わせも悪かった。クライマックスの虫歯菌のカタストロフィはまるで『もののけ』のダイダラボッチだったが、ダイダラボッチが善悪ではなく単なる自然のメタファーであるようには描かれない。なんだか反戦思想のメタファーのようでもあり、それなのに反戦思想が大量虐殺を行ってしまう矛盾も気持ち悪い。大惨劇が起こったというのに、それをまるで考慮しない中途半端な和解とハッピーエンドもどきが描かれるのも気持ち悪い。
贅沢なアニメ技術の無駄遣い、と以前書いたのは何についてだったか。
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