ヒッグス粒子発見にいたる、欧州原子核研究機構(CERN)の、加速器による陽子衝突実験を追ったドキュメンタリー映画。科学の最先端の、素粒子物理学の世界をちょっとだけ覗いてみたいというしたごころと、よくできたドキュメンタリーならば面白いに違いないという期待で。
面白かった。
実験へ向けての期待の高まりや実験失敗の落胆、成功の瞬間の湧き立つような昂揚感。
「パーティクル」とは素粒子のことだそうな。素粒子物理学に関わる学者たちの熱狂(「フィーバー」)が、丁寧に描かれている。
理論物理学者の、抽象的に宇宙全体を捉えようとする認識の遙かさも、実験物理学者の、具体物の中からデータを拾い上げて抽象へつなげようとする力強さも、実に緻密にカメラが追っている。そして科学者たちの、それぞれチャーミングな素顔も伝わってくる。
取材に手間をかけているのか、編集が巧みなのか、ある出来事の最中に、映画が追っている関係者が、それぞれどんなふうに振る舞っているかを、同時にカメラが捉えているように見えるのだが、それがドラマチックで、見ていても引き込まれる。
時折、画面がふいにCG合成になって、物理的な概念を動きで見せてくれるのも楽しかった。
そして、一般のニュースでも真面目に追っていなかった、この実験の意義も、ちょっとだけ感じ取れた。宇宙の構造を説明する根本の理論、その大きな、対立する二つの仮説を証明するデータがとれるかどうか、数十年に及ぶ研究が実を結ぶかどうかという瀬戸際で、結局、対立する仮説のどちらに与することもなく、といってどちらを否定することもないデータが得られた、という結末もなんともドラマチック。
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