2020年11月6日金曜日

『ライト/オフ』-ショートムービーでいい

  有名なYoutube動画が元になっているとは聴いている。見たことはある。それを、同じ監督が長編化したものだという。

 ホラー映画としては充分に怖かった。だがその怖さはショートムービーを超えていない。

 むしろ長編になることで描かなければならない辻褄やらドラマやらが、かえって腑に落ちない。


 ショートムービーの元々の設定は、暗いところでは影として見える化け物が、電灯を点けると消えてしまうという不思議に、見えなくなっている間に化け物が移動していて、次に電灯を消したときにはいきなり近くにいるという恐怖が重なる面白さなのだが、ここに潜む根本的な矛盾が、長い物語を描く際に邪魔になる。

 「暗いところでは見える」といっても、真っ暗闇では観客に見えないので、ある程度の灯りが画面になければならない。その上で、逆光で影になっているそいつが見えるのだ。この中途半端さが、光によって攻撃できるという、ホラー映画において重要な「ルール」を曖昧にしてしまう。

 現実的には真っ暗闇の中で襲われるのは大いに怖いだろうけれど、それは観客には見えないから、表現できない。そこに、この映画の設定の問題がある。

 薄暗がりの中に何かいるように思ってしまう疑心暗鬼こそがこのショートムービーの怖さの本質なのだ。それを、具体的な化け物の脅威と、それに対抗する人間の攻防として描かざるをえない長編映画にしたときに、恐怖の本質が失われ、安っぽさが必然的に生じてしまう。結局化け物による攻撃は物理攻撃だし、光による攻撃という対抗手段も中途半端だし。

 やはりショートムービーでいい。

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