2021年6月1日火曜日

2021年第1クールのアニメ

  1クール通して見たアニメに関しては書き留めておこうと去年あたりに決めた。

 だが1年まとめてだと手間が大きくなるから、1クール毎にまとめてにしようと決め、さて令和3年最初のクールだが、もう溜まってしまっている。3月で放送の終わったアニメを観終わるのに、もうすぐに2クール目が終わるという6月になっているのだ。そして2クール目のアニメは、最初のうちに淘汰したものを除くと、録りっぱなしで今に至る。これを消化するのに3クール目が費やされるんじゃなかろうか?

 とまれ、ようやく観終わった前クール。



「はたらく細胞」「はたらく細胞BLACK」

 軽く観られる教養マンガ。とはいえ「BLACK」の方は意外な感動作となった。劣悪な環境で、だが誠実に仕事をすることでしか、自分を含む世界全体を支えられないことはわかっているのに、労働環境は容易に改善されない。働くことの意味を問うたり、世界が救われるカタルシスを味わったり。なかなか良かった。


「約束のネバーランド 2nd」

 今期は「ホリミヤ」と「ワンダーエッグ・プライオリティ」とともにCloverWorks作品を三つ見続けた。どれもアニメーションのクオリティが落ちずに1クールを維持できる会社の力は賞賛すべきだが、本作は第1シーズンほどには楽しめなかった。前作の、閉ざされた環境からの脱出を賭けた騙し合いは、外の世界の広さに対する幻想と反比例するように濃密だったように思えるが、第2シーズンではその外の世界に舞台を移して幻想が消え去ってしまうと、その中での主人公たちの重みに合わせて「幻滅」が起こってしまうのだった。


「ホリミヤ」

 上に続くCloverWorks作品で、これは毎回実に胸キュンな場面が丁寧に描かれる、とても好もしいアニメだった。

 ところでなぜ登場人物の使っているのがすべてガラケーなのかと思っていたら、作品の発表がその頃なのだった。

 基本的に好もしいと思いつつ腑に落ちないのは、登場人物たちが高校生活を終える切なさと希望が描かれながら、まるで進路が描かれないのはどういうわけなのかという疑問が解消しなかったことだ。大学受験を考えていないのがどうしてなのかと思っていると、専門学校に進むのでもなければ就職するのでもない。そういう意味で、これは結局現実を描いてはいない、ある種の「高校時代」というお伽噺なのだということなのだろう。


「ワンダーエッグ・プライオリティ」

 野島伸司が脚本だというので成り行きを見届けずにはいられないと思った。案の定、CloverWorksのアニメーションは最後まで高品質で素晴らしかったのだが、脚本のエセ文学趣味は相も変わらぬ野島伸司なのだった。周囲の無理解にうじうじと悩む思春期というパターン化された文学。

 ロケーションが思いがけず近所で驚いた。


「ひぐらしのなく頃に」

 新作2クール目のオリジナル展開に期待したが、主人公を変えて、それほどの効果はなかった。


「BEASTARS」

 草食獣と肉食獣の共存する社会を描く原作は、むろん人種差別や性差別をアナロジーとしてテーマに据えている。そこで描かれる問題に対する追究の深度は原作に負っているのだろうが、それだけでなく、これは原作を超える要素を持つ数少ないアニメ化作品だ。細やかな感情の描写が、よく考えられた画面の中のアニメーションによって的確に表現されている。細やかな分、激しい感情の表出が上滑りにならない。レゴシの不器用さとハルの可憐さも、声優たちの演技も含めて、原作の漫画的戯画化以上に、繊細に立ち上がっていた。

 極めて質の高いアニメーション作品だった。


「Dr.STONE」

 1期目は徐々に明かされていく設定が気になったり、科学知識の応用が楽しかったりしたが、2期目は物語の展開が単調な「戦闘-攻略物」に終わって、感情の描き方の戯画的な誇張についていけなかった。


「異世界ピクニック」

 第一回の異世界観が実に魅力的で見続けたが、2回目以降はレベルが落ちたまま、最後まで持ち直さなかった。全体を通したヒキも解決しないまま、消化不良。といって気になるから来シーズンを見ようという気にはならない。


「怪物事変」

 これもやはり第一回のクオリティが続かなかった。作画などの作業量は当然コストと時間の制約があるから仕方ないのだろうが、細部の演出が雑になるのはなんとかならないか。それは原作がそうなのだろうか。「怪物(けもの)」がどんどん安っぽい特撮の怪獣のようになる。人物の行動原理もいたずらに「マンガ」的になる。シーズン1の最後で「事変」という言葉の意味がようやく明かされて、壮大なドラマが始まりそうな展開で終わったが、来シーズンに期待もできない。


「進撃の巨人」

 ついに最終章だというのだが、原作に追いついて終わる想定なんだろうか。

 ともかく、一貫して驚くべき展開を続ける原作は奇跡的な名作と言っていいが、アニメもまたレベルを落とすことなく最終章まできたのは賞賛すべき仕事だ。監督も替わって、CGの使用も増えたがとりわけがっかりするような質の低下がない。

 このまま最後まではしりきってほしい。


「呪術廻戦」

 1.2話の凄まじい作画力に圧倒され、オープニングとエンディングにも感心して、開始時は楽しみにしていたのだが、3話目くらいから作画レベルが落ちて、しばらくすると録りっぱなしになっていた。そしたらまさか2クールとは思わなかったから、録画だけしておいて、観るのが随分と遅れた。

 終了後1ヶ月も経ってからようやくまとめて観てみると、これはやはり面白い。作画が時々レベルを上げて、肝心なところをちゃんと見せるのもいいが、そうそうたる声優陣も頼もしい。

 それと、原作の力なんだろうが、呪術というものに対するなかなかに哲学的な考察をしているのもいい。「ハイキュー」レベルとはいわないが、「鬼滅の刃」よりはよほど大人の鑑賞に堪える。


「Steins:Gate」

 10年前の放送当時、子供たちと見続けたのも懐かしいが、それだけではない。2クール24話を見直して、通して見ることによって設定が把握されると、さまざまな感情がより的確に、必然性のある場面で喚起されるのだ。

 繰り返す世界で悲劇を止められない胸の痛みも、その中で愛するものを守ろうとする戦いの悲壮さも、その中でかろうじて守れたものの大切さも、しんしんと胸に迫る。

 そして物語の展開の大きな起伏も、複雑に組み込まれた構成も、まず骨格となる物語が実に誠実に、知的に作られている。

 そしてアニメーションもすこぶる質が高い。作画が崩れないのも良いし、写実的なインサートの風景描写も、アニメが単なる絵解きになっていない。

 そして宮野真守と花澤香菜の演技の素晴らしさ。


 物語の全体像がわかったところで、勢いに乗って「Steins:Gate 0」を見直す。全23話。

 もう、物語の登場人物に対する愛着もあるし、アニメの質は「1」より落ちたとはいえ、もう一つの世界線で起こったこととして描かれる物語は、これもまたよく練り込まれていて充分に面白い。いくつもの印象的なエピソードを含んで、最後には「1」につながる大きな円環を作る。


 勢いに乗って映画版も観てしまった。


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