2021年7月18日日曜日

『009 RE:CYBORG』-郷愁に浸ることなく

 神山健治作品くらいちゃんと追ってもよさそうなもんなのに、本作でさえ13年も放っておいた。『ひるね姫』も見ていない。もうすぐ閉店するというゲオの棚に見つけてようやく。

 とはいえ『攻殻機動隊SAC』から『東のエデン』まではともかく、『精霊の守人』が残念だったのと、『ULTRAMAN』に心底がっかりしたから、同じCGアニメの本作はどうか。

 「ウルトラマン」を現代版にする、という発想は最近の「シン・ゴジラ」から、この後の「シン・ウルトラマン」「シン・仮面ライダー」まで共通している。世代的に、子供の頃に洗礼を受けた世代が作り手になっているということなのだろう。

 そこで作られるものとしては、庵野秀明の方は着実に仕事をしているというのに、アニメ版『ULTRAMAN』がなぜあれほどひどいことになってしまったのかは、まったくもって謎だった。これが『攻殻機動隊SAC』と同一人物の手になるものだと信じられないというほど。

 さて『009』の方はどうか。


 結論としては『ULTRAMAN』のようにひどくはなかった。が、『攻殻機動隊SAC』ほどのレベルでもなかった。

 もともとの原作『009』が今やどう見ても子供向けでしかないのは明らかだ。その制約があるのだろうか?

 それに比べて『攻殻機動隊』はもともとの視聴者対象を、あたう限り高く設定しても良い。それがあの高品質を保証しているのかもしれない。

 とはいえ、『009』が対象としているかつての子供は今や高齢者だ。だから原作に合わせて子供向けアニメを作るべきなのか、大人の鑑賞に堪えるものすべきかが定まらない。単なる郷愁として見ることを想定するのだというなら、いたずらに高度なSFにしてしまうのはふさわしくない、という判断もあるかもしれない。

 そもそも主人公たちの年齢も、どう設定すべきか。原作通りにするなら、ヒロインが60台になるのだそうだが、それでいいのかという問題がある(で、結局やめて、そこそこ成熟した女性にしてしまって、なんだか清純なヒロインの面影を求めてしまう旧作視聴者には不満もあろう、という感じ)。

 だが、とりわけ原作に思い入れのあるわけではない身としては、いたずらに郷愁に浸ることなく、単なるエンターテインメントとして観たい。

 そういう意味では、アニメーションのレベルは高いし、主人公の能力「加速装置」が何を可能にするのか、といった思考実験を比較的真面目に探究しているのは楽しかった。

 

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