神山健治作品を続けて。
昔テレビで放送されているのを断片的に見たはずだがなんだかまるで話が把握できなかった。前のテレビシリーズとの関係もわかってなかったし、そもそも話はきわめて複雑だったのだ。
警察組織を舞台にしているのだから当然犯罪が起こらねばならず、捜査の過程で大掛かりなアクションも描かれる。緊迫感は高く、ダイナミックだ。
だが事件の全貌は容易には明らかにならない。現在の日本の延長としての未来の日本がかかえる社会問題として、目につくたけでも、難民受け入れ、テロリズム、老人福祉、児童虐待といった諸問題が事件の背後に見え隠れして、そこに本作の主要テーマである電脳化の問題がからむ。
対立は、例によって充分な正当性が双方にないと興醒めになってしまうのだが、その点は充分。日本の抱える問題に対して解決を図るべく、部分的な人権侵害や法を逸脱する方策をとることに対する信念と、それを取り締まるべき警察組織の対立。
その中で起こる人間ドラマの重厚さ。
とりわけ、登場人物の一人が、自分の娘のために命を投げ出す決意をする場面の緊迫感は実に緻密に演出されていて、感動的だった。
その上で、この事件そのものが単なる政治的信念の問題ではなく、『攻殻機動隊』全体に通ずる電脳ネットワークにおけるゴーストの存在に拠るらしい真実が垣間見える結末まで、恐ろしく高品質な物語が紡がれていた。
『ULTRAMAN』による神山健治評価の凋落を一気に挽回する最高級の作品。
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