2015年7月10日金曜日

『FIN(邦題「ザ・エンド」』監督:ホルヘ・トレグロッサ)

 TSUTAYAの棚で見つけて、終末物やサバイバル物が好物の嗜癖が反応してしまった。それに『28週後…』のプロデューサーと『永遠のこどもたち』の脚本家という宣伝文句に期待をかけて。
 といいつつ、実はたぶんそれほど期待はしていなかったのだ。「ザ・エンド」だし(なぜ「ジ・エンド」ではないのかは結局わからない)、スペイン映画だし、「TSUTAYAだけ!」というDVDリリース自体がまず怪しいし。
 この、期待値の低さは精神衛生上大変好ましい結果を生む。実に満足したのだった。良かった。良い映画を観た。
 アメリカ映画を観るつもりだと許せないようなCGの粗さも全然許せるし、たぶんドローンによる空撮だって、空撮が入ること自体が予想外だったから、「おおっ! 空撮か!」とか、期待以上のような気がしてしまう。だからといって空撮が効果的であるような場面でもないのだが、そんなことは好印象に覆われてもうどうでもよくなっている。
 スペイン映画といえば最近では「REC」だが、なるほど、あの粗い手触りだ。
 集まった主人公たち数人を残して、どうやら全ての人間が消失してしまったらしい、とか、主人公たちも一人ずつ消えていく、とか、ノスタルジックなディストピアのテイストが満載の展開は、演技やカメラワークを含めた演出が確かならもう楽しくてしょうがない。人物描写も簡潔でいながらリアルな手触りを感じさせるし、スペインの山岳地帯や街並みがえらく綺麗なのも、どうしてこのSFサスペンス映画に!? という違和感を感じさせて良い。唐突な動物たちの、これでもか、という登場も異常で良い。異常なことが、単なる安っぽさや頭悪さと感じられないように作られている時には、それは異化効果となって表れるのだ。
 もちろん、あの、何も伏線を回収しない結末にはがっかりした。ここまで期待させておいてこれか、とは思った。が、それがネット上に溢れる、この映画への呪詛のようには、逆転しなかった。がっかりはしたが、それはそこまでの好感を減退させるものではなかった。もうそこまで楽しんだから、トータルに言って「良かった」でいいじゃん、という感じ。
 そうかあ、みんなそんなにこの映画に怒ったのか。もう散々な言われようなのだ、ネット上では。星一つ半って、何?
 そのなかではこのサイトの詳しいレビューが素晴らしい。

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