古い映画なのかと思って観ていると、一昨年の映画か。物語が1960年のパタゴニアなのだが、画面の古びた空気がほんとに60年代の映画なのかと思わせる。
その空気感の美しいこと。キタノ・ブルーじゃないが、前編、青みのかかった画面に、背景には峰峰に雪を残した山脈がいつもあって、パタゴニアらしい風が吹いている。
物語はナチスドイツの将校、ヨーゼフ・メンゲレの逃亡時代を描いた実話に基づく。
だが哀しいかな、どう受け取ればいいのか、結局分からなかった。感触から言えば、そんなにいい加減に作られているようには思えないのだが、どういう物語として構成されているつもりなのかがわからないままだった。きっとこちらの読解力不足だ。
謎めいた場面があったりするわけではない。象徴的表現に満ちているわけでもない。もちろん、原題にもなっている人形が、メンゲレの人体に向ける視線の隠喩になっていることはわかるのだが、それがわかって、さて、メンゲレが実は冷酷な非人間的な人物として描かれていたのかどうか、よくわからない。少女に対する治療が、実は実験だったのかどうかもわからない。どっちかとして描かれているんだろうけど。
解釈するための枠組みがどうも用意できないのだ。困ったものだ。もしかしたらものすごく面白い映画だったりしたのだろうか。安っぽい感じはまったくなかったのだが。
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