2015年12月11日金曜日

『狩人の夜』(監督:チャールズ・ロートン)

 1955年の映画だから、もちろんカラー映画が当然の時代に、あえてモノクロ映画である。そのせいもあって、「こんな古い映画なんだから」と、最初から評価の基準が低くなっている気もするが、ジュディ・ガーランドの『オズの魔法使い』や大作『風とともに去りぬ』が1939年だから、ハリウッド映画はもう充分、今の評価基準でうけとめていいのだろう。
 いや、妙な魅力のある映画だった。「カルト映画として人気」という評価なのか。なるほど。美しい映像が頻出してドキッとする。川底に沈む車の座席に座った女の死体がやたら綺麗に見える夢のようなシーンはネットでも誰もが触れているし、子供たちの川下りのシーンに絡む生き物やら、昼だか夜だか分からない作り物の空だとか、悪夢のような、童話のような、妙な世界だった。
 二枚目のロバート・ミッチャムが狂気のシリアル・キラーを演ずるのだが、この牧師がやたらと登場する女性を惹きつけてしまい、そのことを本人も承知の上で利用しつつ、実は(当然と言えば当然だが)女性を憎んでいる、という設定が、魅力の一つではある。だが、どうもよくわからない。信仰心が本物のような嘘くさいような、金に執着するのもどうして必要な設定なのかわからない。そしてリリアン・ギッシュの老女の、一筋縄ではいかないキャラクターも、もちろん魅力的ではありつつ、どのあたりで捉えたらいいのか、落とし所がわからない。
 すごい映画であることは間違いないのだが、どうも捉え所が安定しない。

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