2016年4月10日日曜日

『わらの犬』 -「暴力」への陶酔

 サム・ペキンパーのオリジナルではなく、リメイクされたもの。名高いオリジナルは未見。オリジナルが名作の評価が定着していると、リメイクが誉められることはめったにない。ネットでも評判は良くない。
 だが監督が、この間観た『ザ・クリミナル 合衆国の陰謀』の監督、ロッド・ルーリーだったので、ある程度の期待はした。
 悪くない、と思う。オリジナルに冠せられる「すさまじい暴力描写」というのがどのくらいなのかわからないが、こちらもそれなりの緊迫感はある。
 ただ、「暴力」というのが、派手なアクションであったり、血飛沫が飛ぶ、いわゆる「ゴア・シーン」だったりを指しているとすると、この映画は凡庸の部類だ。わざわざ「破壊」や「残酷」と区別して「暴力」描写と言っているのは、それに登場人物や観客がどう反応するかによるのだろう。
 「暴力」とは言ってみれば、日常からの、意志に反する逸脱を強制させる力を指すのだろうか。気弱な男だと言っていい主人公デヴィットが、南部の住民との、トラブルの果ての、思いがけない殺し合いの過程で、陶酔するように「暴力」の虜になっていく描写はやはり「破壊」でも「残酷」でもなく「暴力」をテーマにした映画なのだと感じた。
 そしてその逸脱が、やがて復帰しなければならない日常の困難さを予想させ、虚しさとして描かれるラストシーンも悪くない。

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