2016年6月1日水曜日

『奇跡の人』 -すごい演技者の競演

 娘が、ここのところ「ガラスの仮面」の「奇跡の人」編あたりを読んでいて、じゃあ、本家を観ようということで、舞台版は未見だが、久しぶりの『奇跡の人』、映画版。だが舞台版も映画版の二人がオリジナルキャストだというので、カメラワークはともかく、ほとんど舞台を観るようなつもりでいいんじゃなかろうか。
 サリバン先生役のアン・バンクロフトがアカデミー賞を獲っているのは知っていたが、ヘレン役のパティ・デュークの方もそうだったのは、今回初めて知った。二人の演技がすさまじさには納得の受賞なのだが、そもそも、舞台劇という出自がその演技レベルを要請しているのだろうとも思う。
 ついでに「奇跡の人」が、三重苦を克服したヘレン・ケラーを指しているのではなく、そうした「奇跡」をもたらした人、サリバン先生を指しているのだということも今回初めて知った。だからアカデミー主演女優賞はアン・バンクロフトで、パティ・デュークは助演女優賞なのだった。
 
 クライマックスの、例の井戸の場面の直前、躾が成功したかに見えたヘレンが、食卓についてナプキンを何度も床に落とすシーンで、わざとヘレンをカメラに背を向けさせたままにするカメラワークはスリリングだった。表情が見えない分だけ、その意図をはかりかねていると、サリバンが「私たちを試している。様子を見ているのだ」とその行為を解説する。なるほど、と思うとともにそのあとの展開をドキドキして見守ってしまう。
 あれは舞台でも同様に観客席に背を向けた配置でテーブルに着席しているんだろうか。だとしたらそれもすごい演出だし、映画オリジナルだとしたらやはりすごいアイデアだ。

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