2018年8月10日金曜日

『IT』-楽しいホラー映画

 90年のテレビ映画は、放送でもビデオレンタルでも見ていて、忘れ難い物語の一つである。3時間という長さのせいもあるし、それ以来、娘の「ピエロ恐い」という発言によって我が家ではたびたび思い出されるせいもあるし。
 夏休みのホラー映画特集のリバイバル上映で、見逃していた2017劇場版がかかるというので、前作の影響を受けていない末の娘と劇場鑑賞。
 冒頭のシークエンス、テレビやネットで何度か目にした、主人公の弟が襲われるシーンで、あれっと思う。恐怖のピエロ、ペニーワイズが牙を剥き出しにするのは構わないが、そのまま幼児の腕が噛み千切られるという描写に違和感を覚える。こういう物理的な害を及ぼすって設定なのか、この映画は?(だがこれは原作にも描かれている描写なのだそうな!)
 その後も次々と恐怖の犠牲者は出るが、それらは、ちょっとやり過ぎじゃないかというようなベタな怖がらせ方で観客の神経に訴えるような場面は多い。たとえば単に迫ってくる、逃げても追いかけてくるという演出や、ゾンビ風メイクの「お化け」というのはちょっと安っぽいんじゃないの? と思っていたが、そういえばあれは子供の側の「怖い」という受け取り方に合わせた現れ方をするのだから「ベタな」のは当然なのだった。だからこそ、物理的な害をなすというようなことはないはずなのだが、あれっ? じゃあさっきの弟のは?
 好意的に解釈するのなら、弟は単なる事故死であって、「弟の死」こそが兄である主人公の恐怖であるのだから、それが兄にとって怖いと感じられる形で描写されているのだ、という解釈もできないわけではないのだが、まあその場面を兄が見ているわけではなく、観客がいわばその代わりにそれをその形で見ているってことか?
 "IT"の活動期間が27年周期だとか、地図を重ねてみると事件の場所の共通点がわかるとか、怖がらなければ何も害を及ぼさないとか、なんとなくホラー的「傾向と対策」がありそうなのだが、オカルト設定がどこまで統一的に定められているのかはどうもわからなかった。
 それにしても、恐怖の対象(つまり克服すべき対象)が、高い割合でつまるところ親の支配だというのはアメリカ的だ。とすれば来年公開だという大人編では「成功」からの転落が恐怖ということなのだろうか。それではペニーワイズの出番は?
 ともあれホラー映画としては、劇場で観たせいもあってとにかく音が怖いということもあるが、充分にその恐怖を楽しめた。
 だがそれより、駄目少年グループががんばる話としてのジュブナイル的側面の方が大きな印象を与える映画だった。そうした場面ではユーモアもたっぷりで、しばしば声をあげて笑ってしまったりもしたのだった。
 そうなると来年公開されるという大人編には何が残っているんだろうか。期待はできないが見届けずにはいられない。

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