2019年6月10日月曜日

『関ヶ原』-ドラマとして見られない

 ここ3年くらい、原田眞人の作品にはいつも感心させられてきたので、これも見られるんだろうというくらいの期待はしていた。題材的には、教養講座のような関心はあるが、作品として見たい! というほどの興味はなく。
 さて始まってみると、期待通り上手い上手い。秀吉役の滝藤賢一がこんなに上手い役者だとは知らなかったが、これも確かな演出力あっての演技なんだろうと思わせる。役者の所作も切れがあるし、画面の重厚感も、安心の原田眞人品質だ。
 にもかかわらず、『日本のいちばん長い日』『突入せよ あさま山荘事件』のように、大きな事件に関わる人々のそれぞれの動機や必然が絡み合う物語としての重厚感が感じられない。
 主人公の石田三成の言う「義・正義」がわからない。わかるように描かれているのを読み取れないだけなのか? 描かれているように感じないのだが。その裏返しとして、対抗する徳川家康の論理に一理を感じないのも。
 おまけに、ヒロインに有村架純を迎えるのは興行的にはしかたがないのだろうし、悪い役者ではないのだが、いかんせん、関ヶ原という大事に臨んで、石田三成が一女忍者にこだわっているバランスの悪さが、見ていてうんざりしてしまうのだった。
 ネットでの評価に頻出するように、とにかく合戦の趨勢と各軍勢のせめぎ合いの論理がわからないことも、どうにも大きな瑕疵であることを否定しがたいのだが、なにより主人公の人物像がわからない上記二つの欠点が覆いようもなく、人間ドラマとして見られなかった。

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