2019年6月4日火曜日

『ミックス』-古沢良太はどこへ行くのか

 前作『エイプリルフールズ』があんなだったから期待はしていなかったが、『キサラギ』評価に対する落とし前というような意味で観てみる。
 が、ちっとも面白くない。「面白さ」がないというのは、ある意味では仕方がないともいえる。「面白さ」は個人的な感情で、それが喚起されるかどうかは幸運に頼るようなところがあるともいえる。
 だが、面白くなっているはずだ、という確信あるいは自信はあるべきである。ただでさえテレビでくり返しCMを流すような娯楽映画なのだ。「面白さ」を追求していない「芸術映画」ではないのだ。
 一方で「これは駄目だ」と思えるような安っぽさや志の低さは、意識して無くすことはできるはずだ。もちろんそれとてさまざまな制約との妥協の程度の問題でもあるのだが。
 さて本作は、まず古沢脚本に、ほとんど工夫の跡が見られない。ほんのわずかの伏線もないとは言わない。だが、2時間程度の映画を観ることの報酬として充分なほど、作り物を見せられる快感があるわけではない。物語は、まったくのところ予定調和であり、途中の紆余曲折、挫折、葛藤までが予定通りだ。
 そして演出もまた安っぽさ全開だと思ったら『エイプリルフールズ』と同じ監督なのだった。そしてテレビの『リーガル・ハイ』の監督でもあるのだった。
 これはやはり、テレビドラマに求められるノリと映画のそれは違う、ということなのか?
 例えばクライマックスの大会決勝戦の最後の場面、決勝点が相手に入って試合が終わり、主役の2人が静寂の中で見つめ合って抱き合って、それから観客の一人、遠藤憲一が立ち上がって拍手を送り出すとスタジアムの観客が次々とスタンディング・オベーションになる、という、およそ馬鹿げた演出を、どういう感情をもって見れば良いのだろうか。実際に感動的な試合の結末は現実のスポーツにいくらでもあり、それはこんな馬鹿げた演出のように起こったりはしない。決勝点が決まった直後、それが感動的ならば観客は直ちに大騒ぎしている。映画の観客はスポーツの試合の観客とは違うのか? 違う感動が映画の観客には期待されているのか?

 ということですっかりがっかりだったのだが、古沢良太、『デート』までは悪くなかった。『コンフィデンスマン』を見ていないのは、うっかりのチェックミスだ。問題は映画の方なのか? 『GAMBA』もひどかったし。

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