逃げる殺し屋の乗った列車を、線路下の道路を車で追う凄まじいシーンだけはやたらと印象に強かった映画だが、それ以外の部分は、観た覚えがなく、もしかしたら全編を見たかどうかも怪しい。
あらためて観てみると、まあ説明不足で観る者があれこれ補って考えないとたちまち話がわからなくなる。
それでも、とにかくジーン・ハックマン演ずるドイルの貪欲な仕事ぶり、執念には迫ってくるものが確かにある。このころ40を超えていたハックマンの、体の動くのも素晴らしい。
演出や編集も、カットが変わると唐突に場面が変わるぶっきらぼうな編集があるあたりはドキュメンタリータッチでもあり、かと思うとスムーズにカメラが切り替わって、状況を多角的に捉えるあたりの計算された編集の緻密さは職人芸だ。
そして何よりブルックリンの街並が素晴らしい。路地裏の薄暗さや濡れた路面、郊外らしき取引場所の廃工場の佇まい。
廃工場の追跡場面は、どうも黒沢清に影響を及ぼしている感じだ(調べればそういう発言はありそう)。カメラは薄暗い部屋にいて、開け放たれたドアから見える向こうの部屋に何かの気配を感じる(むろん勝手に観客がそう想像するように撮られているのだ)。
やはり映画の力が横溢した傑作なのだとあらためて納得。
0 件のコメント:
コメントを投稿