2021年5月10日月曜日

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』-価値の対立

  30年以上経って続編が公開されるというので宣伝としてテレビ放送された。確かに30年位前に観て以来だが、面白かった記憶はあるし、最後のあたりの展開は覚えている。感動的だった。

 で、30数年来の鑑賞だが、始まってもうすぐにその凄さがわかる。すっかり大人の鑑賞に堪える。

 いささか説明不足とも言えるが、パンフレットや設定集などの資料を見ることを前提にしているせいか。あるいは最初から繰り返し見ることが前提されているか。ともあれ、そのリアルな手触りは、誠実に、よく考えられていることが確実に伝わってくる。

 状況から、それぞれの人物の行動原理が自然に導かれていて、その言動は、米国映画並みとは言わないが、相当に気が利いている。ネオ・ジオン「総帥」として演説をした直後に、マントをはずしながらシャアが「これじゃあピエロだよ」と言う。どう見えるかを俯瞰する視点が、そう見えるレベルにとどまる凡百のアニメとは違う。

 そして、二人の主人公、アムロとシャアの対立は、単純にどちらかをのみ「正義」として描いてしまうことなく、それぞれの動機がバランスをもって描かれる。もちろん「正義」はアムロ側にあるとして描くのが前提なのだが、もちろんシャアが単純に「悪」として描かれるわけではない。

 こういうふうに対立をバランス良く描くところが、見られる安心感を保証する。『新聞記者』や『Fukushima50』とは違って。


 そしてやはり、敵も味方も最悪の事態を止めるために身を投げ出すという最後の場面の展開は感動的だった。

 もちろんこれが感動的であるためには、ここまでの展開がリアリティに富んだものでなくてはならない。

0 件のコメント:

コメントを投稿