志村貴子の原作を佐藤卓哉監督でアニメ化。
作画も悪くないし、キャストは達者な人たちが豪華配役だし、文句ないかと思いきや、ちっとも面白くない。『STEINS;GATE』の佐藤拓哉にしてこれなのは悲しい。
志村貴子の原作を佐藤卓哉監督でアニメ化。
作画も悪くないし、キャストは達者な人たちが豪華配役だし、文句ないかと思いきや、ちっとも面白くない。『STEINS;GATE』の佐藤拓哉にしてこれなのは悲しい。
イギリスBBC制作の刑事ドラマ。このところ「特捜部Q」はデンマーク、最近観ている『アストラッドとラファエル』はフランス、とヨーロッパの刑事ドラマでは面白いものを観ているが、古くは「ミレニアム」シリーズはスウェーデン、もっと遡れば「第一容疑者」シリーズはイギリスのグラナダTVだった。このレベルの刑事ドラマを日本で探すのは難しい。「トリック」は軽くなってしまって対抗できないが「ケイゾク」の方がまだ味わいがあった。それらのパロディ的な作られ方をしている「クイズ」はさらに好きだった。坂元裕二の「初恋の悪魔」は2話以降を録画して、きっと1話を再放送されると信じてまだ観ていないのだが、こうした名作に対抗できるんだろうか。
本作は1話45分を6話で、4時間半の長丁場なので、とりあえず観始めて眠くなるまでと思っていたら先が気になり、結局一気見してしまった。こういうのは充実感があって幸せな物語享受だ。
最初のうちはバラバラな人物たちが描かれ、徐々に彼らが一つの事件に関わっていく。粘り強く観られなければそのテンポの遅さ、それだけに緻密な作りに乗れない。それだけに、楽しくなってしまっていくともうやめられない。人物一人一人がじっくり描かれる情報量の多さとドラマの強さ。
充実していた。
観たのは4作目だが、物語的には第2作だって。だが観た中では最も悲劇的に終わるとも言える。最も助けたかった被害者の一人は同時に加害者でもあり、救い出されて終わり、というわけにはいかなかったのだった。
ネットの評判で低評価の人が言うことは実に尤もで、主人公を始め、警察があまりに無能である(無策だったり違法捜査をしたり)という面は確かにある。その前に犯人側がやっていることは結構無茶で、これが今まで捜査されずにいるのもおかしな話だ、とも思う。
でも結局結構面白いのはなぜなのか。重厚な人間ドラマ、というにはあまりに物々しいばかりではないのか。破壊的なまでの一途さも、上記の無能さとも言えるほどの過剰でもあり。
はて。
どういう事情で作られ、どういう事情で放送されたのかわからないが、観終わってから調べると2年前に作られたものだった。中国ロケなのだが、コロナは、マスクはどうなっているのかと思ったが、それで。
100年前の上海の街並の撮影は見事で、音楽も美しく、どういうわけでこんな異様に質の高いドラマが作られたのかと不思議だが、面白かったかといえばそうでもない。どこを見るべきか、最後までわからないままだった。
ところでこれが渡辺あや作品で、しかも『ワンダーウォール』と『今ここにある危機と僕の好感度について』の間に作られた作品なのだった。両者に比べて、直ちに面白いとは思えないものの、やはり無視はできない存在ではある。
一転してヨーロッパの陰鬱な刑事ドラマ。中途半端なおふざけもなく徹底してシリアス。今回も重厚なタッチで猟奇的な犯罪が描かれる。主人公はますます意固地な偏屈者になっていて、ここまでやったら見ていて不愉快じゃないかとハラハラするが、最後にはそこから周囲の人への穏やかな歩み寄りが見られて安心する。その落差を狙っての極端なキャラクターづくりか。
大がかりな犯罪に対して、警察が組織的に動かないことにやきもきするが、事件はそれなりに解決に向かう。悲劇は描かれるが、そのままいかにもの悲劇的決着なのかと思いきや一捻りしてしぶとい生き様が描かれるのもまずまずのハッピーエンドで後味は良い。
予告を見ると韓国版の『12人の怒れる男』か、あるいはコメディタッチなところをみると『12人の優しい日本人』かと思い、どちらかを期待して見てみた。
結局はどちらともつかぬ中途半端な出来でがっかり。
韓国映画らしい中途半端で不必要なコメディタッチと過剰な激情型演技に鼻白む。登場人物たちの判断がいちいち不自然でいかにも作り物じみているのと、それなりに達者な役者陣の演技や演出に落差があって、毎度韓国映画を観るときに感じる居心地の悪さをここでも感じる。感情の微妙な機微を感じ取ろうとしても、滑稽に描かれてしまうか大げさな怒りや悲しみが唐突に描かれてしまい、自然で合理的な感情の動きが阻害される。
裁判の最中の不規則発言が、時折は阻止されるものの、それよりも映画的に盛り上がると判断されればいくらでも放置されてしまうとか、判事が判決を述べる直前に判断を変えるとか、到底真面目には見られない。裁判映画を真面目に観ようというという以外にどう見よというのか。
事件の真相が明かされるくだりも、主人公たちに推測ができたとたんに再現フィルムとして真相が語られる。そんなふうに真相に至れるなら警察でも裁判所でも、そこに至れないはずはないのに。
それでいて司法の人権保護を謳っているかのようなとってつけたような教訓にも鼻白む。
こういうアニメがあったなと思いつつも、何だっけと思いながら観た。終わってから調べると、なるほどCMでは観ながらコロナで公開が見送られたのか。スタジオコロリドだが『ペンギン・ハイウェイ』の石田監督ではない。とはいえ絵柄は『ペンギン・ハイウェイ』とまるで同じなのはジブリと同じく、スタジオが絵柄を決定しているのだ。それはそれでアニメスタジオの戦略かもしれない。
で、本作はというとアニメーションの質の高さに対してまるで面白くない。この浅さイタさは…と思っていたら岡田麿里なのだった。そういえば題名が例によって五七の韻律になっているではないか。
始まって画面が暗いうちにナレーションが被って言うことには、あなたの力になりたい、あなたに好きと言われたい、だ(不正確だが大体そういう内容)。これをイタいというほかどう受け止めればいいか。
主人公の言動が不自然すぎて、というのはネットの感想の通りだが、途中で中身が入れ替わる展開があるのに、別の人格が入っても言動が変わらない。イタくて変な言動を描くことが自己目的化していて、中身が別の人格になっているという展開が意味をなさない。
大体がそういう調子だ。脚本はまあいつもの岡田話だというのに、演出がそれをどうともしていない。アニメ的な「ちょっとうまい」描写をすることに終始している。拒否されていた相手の心を振り向かせ、最後は両思い、という「お約束」がまるで説得力をもたない。
これもまた「アニメ的にうまい」だけのアニメ。
『SAW』の脚本家というので観てみる気に。殺人鬼に拉致されて、救出隊とともにアジトから逃げる、というだけの話だが、テンション高いままサスペンスに溢れた逃亡劇に、最後の反撃まで、悪くないできだったが、それにしても殺人鬼の背景やら、ヒーローの関わり方も、何だかあまりに説明不足で妙だなと思っていたら、終わってから調べると続編なのだった。それでも観られるくらいに中身はない話なのだった。
途中、殺人鬼から2グループに分かれての逃亡が描かれているので、これは同時進行と思わせて実は時間的にはズレているという、いつもの『SAW』のトリックか!? と期待して見ていたのだが、そんなことはなく途中で合流してしまう。
残念。あれが『SAW』の最大の見せ所なのに。殺人装置なんかじゃなく。
それにしても冒頭のクラブでの大量虐殺は意味不明だったな。壮絶で、これは上映できるんだろうかいうくらいの派手な大量虐殺なのだが、何のためにやっているのかわからん。前編を見るとわかるんだろうか。
前に観たときはDVDを借りて観たのだが、NHKで放送されたので。
前の記事を見直してみたが、今回の感想とまったく同じところに反応しているのだった。
それにしても、ちょっといい小品、という以上の、何か社会的な意味があるというふうには感じないのは残念ではある。
岩波ホールで『12か月の未来図』を観た時に次回上映作品としてCMを観て興味を惹かれていた。始まってみると3時間半にも及ぶ長尺で、一度に全部を見ることはできなかったばかりか、途中30分くらいはとばした。
ともかくもニューヨーク公共図書館の活動をひたすら追う。フレデリック・ワイズマンは、ナレーションも字幕も音楽も入れない。ひたすらそのまま映す。何のことなのか、たぶんアメリカ人が見る半分くらいしかわかっていないんだろうが、とにかく観客の主体的な視聴を必要とする映画なのだった。
ともかくも「公共」なのだった。日本の図書館とはまるで存在の意味が違う。映し出される多くは講演会やセミナーだ。それも説明なしに始まるから、誰なのかも、何の演題なのかもわからないでとりあえず見続ける。最初の講演者がリチャード・ドーキンスだったのは、始まってから急いでネットで調べてわかった。そうした様々な講演に熱心に耳を傾ける聴衆の顔を次々と映していくのだが、黒人やヒスパニック系が多いのは、編集上の演出か、本当にそうなのか。こうしてアメリカの「公共」が作られ、保持されていくのかと実感させられた。
さすがにそうした断片をひたすら並べていくだけで3時間半は、特別な関心がある人しか堪えられないだろうが、合間合間に、図書館の運営会議が挟まれる。そこで議論されていることが、講演やセミナーや開架の解説になっているのだ。
そうした議論や活動が、日本で可能とはとても思えないところに、ともかくも、アメリカという国の公共のありかたが強く印象づけられるドキュメンタリーだった。
今年は85本。
コロナ初年度の一昨年よりペースが落ちたが過去2番目に多かった。11月に12本観ている。秋に映画。これからの時期ということになるが、最近NHK-BSのドキュメンタリー番組に面白い物が多いのを再発見してせっせと観ているので、そこに結構時間がとられてもいる。今年はどうか。
さて85本から選ぶ10本。
11/13『マリグナント』-映画館で観るホラー
11/25『1917』-制作の情熱
12/8『ドロステのはてで僕ら』-最高
12/27『LION 25年目のただいま』-子供の不安
1/12『残念なアイドルはゾンビメイクがよく似合う』-「楽屋」
1/20『ワンダーウォール〜京都発地域ドラマ〜』-脚本と若手俳優
2/5『THE GUILTYギルティ』-すさまじい緊迫感と焦燥感
2/26『愛しのアイリーン』-価値ある映画化
5/23『エンドレス 繰り返される悪夢』-よくできたループ物
8/1『明日への地図を探して』-丁寧な作り
ホラーとしては一本きりの『マリグナント』は映画館で観るというアドバンテージがあるものの、ホラーとしては次点の『ゴーストランドの惨劇』のように特別感のあるものというより、「よくできた」という完成度の高さを評価した。
同様の「よくできた」お話作りということでは『エンドレス 繰り返される悪夢』がループ物として出色のできで、韓国映画らしい過剰さとのアンバランスさを越えて選びたい。
『1917』と『LION 25年目のただいま』は堂々たる大作米画の中から、圧倒されるような思いで観た2本。
『THE GUILTYギルティ』は対照的に、低予算だが完成度の高い脚本と演技、演出で見せた欧州映画。
邦画としては『残念なアイドルはゾンビメイクがよく似合う』をベスト10に入れるのは我ながらどうなの、という気もするが、それくらい楽しかったし、心に残ったのは間違いない。
同じく舞台劇から派生したプロジェクトとして『ドロステのはてで僕ら』は、さすが上田誠ブランドというだけでなく、映画的工夫も凝らされていて唸らされた。
『ワンダーウォール〜京都発地域ドラマ〜』は素材の良さもあって好印象の度合いが高いが、邦画3本とも、予算としてはハリウッド映画の規模の何分の一くらいなのやら。
それらに比べて、同じく大作とは言えない『明日への地図を探して』を観ると映画的な文化の厚みが違うなあとあらためて思い知らされる。
さて、後を引くという意味で今年一番なのは『愛しのアイリーン』だったか。原作を再読してしまったせいもあるが。
次点10本。
11/22『アルカディア』-不穏と脱出
11/27『A Ghost Story』-「意味」は判然としない
12/4『LIFE』-サスペンスと強い感情
1/7『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』-爽快
1/30『ゴーストランドの惨劇』-佳品
5/27『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』-男の子
6/25『フロッグ』-複線の伏線
6/29『アメリカン・スナイパー』-戦場と日常と
3/31『王立宇宙軍 オネアミスの翼』-やはり名作
8/25『インターステラー』-手間のかかった奇跡
以下85本を視聴順に。
9/8『屍人荘の殺人』-意外とスカスカな
9/12『イニシエーション・ラブ』-ドンデン返しだけが
9/12『リズと青い鳥』-残念ながら
9/18『REC3 Génesis』-謎設定のゾンビ物
10/3『ゼイリブ』-過剰とアンバランス
10/9『シャイニング』-「世界遺産」的
10/10『ソウ・レガシー』-映画における倒叙トリック
10/16『マラソンマン』-正統派サスペンス
10/20『ババドック』-メタファーとしてのホラー
10/23『大統領の陰謀』-準備が足りない
11/1『幸せのレシピ』-魔法がとけて
11/2『箪笥』-腑に落ちない
11/3『マッド・ハウス』-「洗脳」に見えない
11/4『HELLO WORLD』-アニメのキャラクター
11/13『マリグナント』-映画館で観るホラー
11/13『ゾンビ・サファリパーク』-B級ながら良作
11/18『キャビン・イン・ザ・ウッズ』-不思議な不穏な
11/21『ゾンビワールドにようこそ』-設定を活かす
11/22『アルカディア』-不穏と脱出
11/25『1917』-制作の情熱
11/27『A Ghost Story』-「意味」は判然としない
11/27『ビートルズと私』-雑談
12/4『LIFE』-サスペンスと強い感情
12/4『ウトヤ島7月22日』-工夫がなく不合理
12/8『ドロステのはてで僕ら』-最高
12/12『ゾンビ・リミット』-真面目なゾンビ映画
12/19『ファウンド』-よくわからない
12/23『The Loop 永遠の夏休み』-ループ物の落とし前
12/24『キャビン・フィーバー』-許せない不合理
12/26『AKIRA』-細部の想像力
12/27『LION 25年目のただいま』-子供の不安
12/28『ヘイトフル・エイト』-初タランティーノ
1/7『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』-爽快
1/12『残念なアイドルはゾンビメイクがよく似合う』-「楽屋」
1/13『トロールハンター』-やっと観られた
1/16『ほえる犬は噛まない』-レインコートと紙吹雪
1/20『ワンダーウォール〜京都発地域ドラマ〜』-脚本と若手俳優
1/26『(r)adius』-ジャンルの混交
1/29『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』-ジブリ的フランスアニメ
1/29『サランドラ』-父権的家族
1/30『ゴーストランドの惨劇』-佳品
2/2『さんかく窓の外側は夜』-無惨な絵解き
2/5『Knives Outナイブズ・アウト』-間然するところのない
2/5『THE GUILTYギルティ』-すさまじい緊迫感と焦燥感
2/6『名前』-テーマ回収の浅さ
2/10『オッド・トーマス』-縁のないエンタテイメント
2/12『ハロウィン』-凡作
2/26『愛しのアイリーン』-価値ある映画化
2/27『グランド・ジャーニー』-ちょっと冷める
3/4『凶悪』-批評的ではなく
3/5『ハロウィン』-ヒット作のはずだが
3/6『バトル・オブ・セクシーズ』-「問題」作としてでなく
3/12『スパイの妻』-リアリティの水準
3/16『寝ても覚めても』-わからない
3/19『透明人間』-評価保留
3/31『王立宇宙軍 オネアミスの翼』-やはり名作
4/2『ランダム 存在の確率』
4/21『天使のたまご』-雰囲気だけでは
4/24『攻殻機動隊SAC』-おそるべき
4/30『ブラック校則』-拮抗しない
5/1『特捜部Q 檻の中の女』-北欧ミステリー
5/2『特捜部Q Pからのメッセージ』-計算された救い
5/15『機動警察パトレイバー the movie2』-最高
5/23『エンドレス 繰り返される悪夢』-よくできたループ物
5/27『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』-男の子
5/28『ルーム』-強い
5/29『シライサン』-なぜ映画では
6/4『Zoom』-層の厚さ
6/11『メッセージ』-よくできたSFではあるが
6/15『OLD』-ある種のSSS
6/25『フロッグ』-複線の伏線
6/29『アメリカン・スナイパー』-戦場と日常と
6/30『響 -HIBIKI-』-賛否
7/15『夜の来訪者』-精緻な脚本
7/16『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』-盛衰
7/23『ペリカン文書』-堂々のハリウッドサスペンス
7/31『ムーンフォール』-パターン
8/1『明日への地図を探して』-丁寧な作り
8/7『ザ・ハント』-内面への好奇心
8/9『It: Chapter Two』-前作には及ばず
8/10『1408号室』-想像の恐怖
8/13『パーム・スプリング』-完成度の高いループ物
8/24『悪の教典』-三池節
8/25『インターステラー』-手間のかかった奇跡
8/26『アフタースクール』-ミスリードとどんでん返し
8/27『ダークナイト』-とびきりの