2022年9月15日木曜日

『ニューヨーク公共図書館』-寡黙なドキュメンタリー

 岩波ホールで『12か月の未来図』を観た時に次回上映作品としてCMを観て興味を惹かれていた。始まってみると3時間半にも及ぶ長尺で、一度に全部を見ることはできなかったばかりか、途中30分くらいはとばした。

 ともかくもニューヨーク公共図書館の活動をひたすら追う。フレデリック・ワイズマンは、ナレーションも字幕も音楽も入れない。ひたすらそのまま映す。何のことなのか、たぶんアメリカ人が見る半分くらいしかわかっていないんだろうが、とにかく観客の主体的な視聴を必要とする映画なのだった。

 ともかくも「公共」なのだった。日本の図書館とはまるで存在の意味が違う。映し出される多くは講演会やセミナーだ。それも説明なしに始まるから、誰なのかも、何の演題なのかもわからないでとりあえず見続ける。最初の講演者がリチャード・ドーキンスだったのは、始まってから急いでネットで調べてわかった。そうした様々な講演に熱心に耳を傾ける聴衆の顔を次々と映していくのだが、黒人やヒスパニック系が多いのは、編集上の演出か、本当にそうなのか。こうしてアメリカの「公共」が作られ、保持されていくのかと実感させられた。

 さすがにそうした断片をひたすら並べていくだけで3時間半は、特別な関心がある人しか堪えられないだろうが、合間合間に、図書館の運営会議が挟まれる。そこで議論されていることが、講演やセミナーや開架の解説になっているのだ。

 そうした議論や活動が、日本で可能とはとても思えないところに、ともかくも、アメリカという国の公共のありかたが強く印象づけられるドキュメンタリーだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿