2016年1月24日日曜日

『単騎、千里を走る』(監督:張芸謀)

 今度こそチャン・イーモウだ。北京五輪開会式演出の3年前に高倉健を主演に迎えて作られた作品である。
 「巨匠」だと構えて観るほどに複雑な映画でも大層な映画でもなかった。不器用な親子の交流を描いた、わかりやすい人情劇である。感動的だったと言っていい。
 だがまあ、何と言っても中国の景色と高倉健である。アップで、口をもぐもぐさせる表情だけで観る者に強い感情を伝える。寡黙で抑えているからこそ感じる強い感情だ。一方で軽い台詞を話すときも、まるでそういう人が実在しているような気がする。もはや高倉健本人と区別できないような高田剛一という人間が喋っているようなのだ。ある時期からの高倉健は、そういう役柄を選んで仕事をしてきたのだとは思うが、本当にもう高倉健本人がパラレルワールドでいろんな人生を送っているような気がしてしまう。
 ところで日本パートは、明らかに画が青く、中国の風景に比べて現実感に乏しかったが、あれは機材とか空気とかのせいではなく、物語の対比を際だたせるために意図的にやってるんだろうな。寺島しのぶが、本人の実力とは思えない大根芝居をしていたのも。

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