2016年2月20日土曜日

『ショコラ』(監督:ラッセ・ハルストレム)

 たぶん2年くらい前に観たが、娘のリクエストで録画した。面白そうな印象を与えるように話したんだろう。実際、記憶に拠れば観た印象は悪くなかった。ヨーロッパ映画の小品、という記憶だったんだが、実はアメリカ映画で、しかもアカデミー賞に助演女優、主演女優どころか、作品賞でさえノミネートされている。そんなメジャーな作品には見えなかったが。そういえばジョニー・デップが出ているのだった。
 舞台がヨーロッパなのが、ヨーロッパ映画かと思ってしまっていた原因だが、見直してみるとヨーロッパの田舎にロケをしている風景もあるのかもしれないが、村の様子はなんだか作り物めいていて、ディズニーランドの中の街角、という感じにも見える。

 ヨーロッパの田舎の村に流れ着いた母子の開いたチョコレート屋が、やがて固陋な村の空気を変えていく…というシンプルな話で、それはそれで愛すべきお話ではあるが、どうもそれ以上には感じない。アカデミー作品賞というような大層な映画には。
 主人公母子が風に誘われてあちこちを転々とするジプシー的な人として描かれているんだが、それならば最後にこの村に定住してはだめだろう、とも思った。これはいわゆる「来たりて去りし物語」ではなかったのか。ハッピーエンドは嫌いではないが、予定調和の呆気なさもまた不満ではあるのだった。

 ところで。
 ラスト近くに、村の空気が変わったことを示す、若い牧師の説教にこんな一節があった。
『人間の価値を決めるのは、何を禁じるかでは決まりません。何を否定し、拒み、排除するかでもありません。むしろ何を受け入れるかで決まるのでは? 何を創造し、誰を歓迎するかで…。』
これは素直に感心して喜ぶべき台詞なのだが、映画を観た翌日、ニュースで、米大統領候補、共和党のトランプさんに対するローマ法王のコメントが流れていて、その符合に驚かされたのだった。
 橋を架けようとしないで、そこに壁を作ることだけを考える人はキリスト教徒ではない。

 

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