2016年7月3日日曜日

『その男 ヴァン・ダム』 -粋なヴァン・ダム讃歌

 どこかで、ジャン・クロード・ヴァン・ダムが自分自身を演ずるセルフパロディの映画があると聞いたことがあって、放送予定で見つけて、これか、と。
 ヴァン・ダムに特に思い入れはなく、代表作のあれやこれやも観ていないんだが、比較的最近『エクスペンダブルズ2』で重要な役どころをやっているのをみて嬉しくなったものだった。
 さて映画は、冒頭の長回しから比較的よくやっているぞと感心しないでもないんだが、微妙にグダグダだなあと思っていると長回しの最後にヴァン・ダム自身が「全然駄目だ。俺はもう47歳だ、ああいうのは無理だ」と言うという見事な落とし方をする。ファンだというタクシー運転手のおばちゃんに言いたい放題言われて口ごもるやりとりや、郵便局強盗立てこもり事件をある程度まで見せておいてから、もう一度時間を巻き戻して同じ事件を内側から描いてみせるなど、映画としてかなりうまい。単なるおふざけの映画ではない。
 単なるどころか、まるでシリアスな映画なのだった。確かにあちこちは笑えると言えないこともないのだが、それよりはるかにシリアスでペーソス溢れる映画なのだった。
 それはそうだ。かつて売れっ子のアクション・ムービーのスターだった男が中年になって、出演作がB級映画ばかりになって、娘の親権を争う裁判で負けそうで…悲哀に満ちた設定ばかりだ。
 そしてその中でヴァン・ダムが、最後の最後でヒーローとなるかというと、一瞬なるかと思いきやそれは幻想で、現実にはやっぱり悲哀に満ちた、でもわずかなハッピイエンドでしめる、という、映画自体にも、そしてヴァン・ダムにも、大いに好意的な気分を残して終わる映画なのだった。

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