2016年11月26日土曜日

『ER~救急救命室』 -映画作りの層の厚さ

 最初のNHKの放送がもう20年前のことだが、今観るとどんな感じなのだろうと、深夜の映画枠でなぜか2本立てで放送されているのを録ってみた。
 オープニングのERの戦場のような描写を観て、これは一人で観るのはもったいないと、当時一緒に観ていた連れ合いを誘って観る。
 当時は、とにかく毎回見事な脚本に圧倒され、アメリカの映画文化の層の厚さ、システマチックなドラマ作りのノウハウの蓄積に感嘆していたのだが、今観ると、演出やらカメラワークやら編集やらといった技術的な面でも圧倒的なのだった。
 「戦場のような」(劇中でははからずも「地獄のような」という表現が使われたが)、という比喩は、忙しさを戦いに喩えているわけだが、忙しさとは同時並行的に事態が展開しているということだ。一人の人間のやるべきことがいっぱいある、ということではなく、複数の患者の治療が同時に行われていて、それぞれのER(エマージェンシー・ルーム)がフル稼働している様子を、カメラが自在に動き回りながら描写していくのだ。その中に笑いあり、痛みあり、ドラマあり、キャラクター造型あり、シチュエーションの解説あり、恐ろしく情報量の多いシークエンスが冒頭から続く。その脚本といい、演出といい、編集といい、役者陣の質の高さといい、到底日本の制作陣には実現できないだろうと思われる。
 その中で、20年前のアメリカの現実が、今の日本には当時より身近に感じられる。
 とはいえ、アメリカと日本の間には、宗教や銃に対する距離に大きな隔たりがあるから、同じような状況になるとは言えまい。
 そして映画・ドラマ作りの層の厚さも、一向に縮まる気配はないのだった。

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