2019年3月3日日曜日

『突入せよ あさま山荘事件』-安定した映画職人の仕事

 「浅間山荘事件」の攻防戦を、指揮した佐々淳行を主人公に描く。
 『大空港』の映画力に圧倒されて、こういうのは邦画には無理だよなあと思っていたところ、続けて見た本作に邦画を見直した。スケールとしては比べるのは無理があるが、映画力は負けてない。原田眞人作品はここ3年ほどで『我が母の記』『日本のいちばん長い日』と、それぞれ力のある作品を観て、その度、洋画を見ては彼我の差を思い知らされる邦画のレベルを見直すことになった。ちゃんと映画を撮れる職人が日本にもいるのだと。おまけに役所広司が主演だから、安定感も抜群。
 立てこもっている犯人側の視点が全くないのが難点だという批判はあるだろう。確かにそれをやれば、物語がもっと立体的になるだろうな、という期待もある。
 だが、内部がどうなっているのかがわからないという、警察側からの不安感を描くためには、あえて内部を描かない、というやり方はあるだろう。それを意図しているのかどうかはわからないが。
 警察関係者が主人公ということで、やはりこれも横山秀夫の味わい。困難な作戦に、それぞれの部署のそれぞれの立場の関係者が、それぞれの背景を負って立ち向かう。その複雑さと、それが組み合わさって物事が成就する充実感は大きい。

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