2019年10月3日木曜日

『花とアリス殺人事件』『花とアリス』-横溢する映画的魅力

 たまたま乙一によるノベラズ『花とアリス殺人事件』を読んで、映画の方を観直したくなって、ついでに何年ぶりだかわからない『花とアリス』まで続けて観た。
 どちらも話としてはどうということもなく、初期の、物語の辻褄に気の利いた仕掛けをして見せる映画ではないのだが、どこもかしこも良い画と良い演出と良い演技がひたすら続く、映画としての快楽に満ちた映画だった。相変わらず。
 仕掛けも、ないことはないのだが、そこで感動するというわけでもなく、それよりもやはりそこら中に満ちた映画的魅力が強い。それは例えば蒼井優の魅力でもあるのだが、それを画面に定着できているところが岩井俊二のすごいところだと言うべきなのだろう。
 それにしても物語としてはどうも腑に落ちないところはいろいろあって、もっと考えると楽しめるところがあるのかもしれないとは思う。『殺人事件』の方の、湯田君がクラスの女子に婚姻届を配りまくっていたエピソードとか、『花とアリス』の「ナメクジ」とか「祭で見る幻」とか「海岸で拾った(別のトランプの)ハートのエース」とか「落研の先輩の高座が観客からブーイングになる」とか、どう考えたら良いのかよくわからない描写が、それなりに意味ありげに描かれるのを、それなりに解釈するともっと面白いのだろうか。大体こういうのは、岩井俊二が話すのを聞くと、本人なりには何らかの必然性があるような説明をするのだが、そういうのを聞いても、それほど大した「意味」ではないことが多いのだが。

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