2021年10月20日水曜日

『ババドック』-メタファーとしてのホラー

  誰かが高評価しているというので。

 後から調べてみるとフリードキン監督だったのだが、どういうわけか。

 いや、面白かったのだが。ホラーというよりはサイコサスペンスだった。オカルト要素があるのかどうか怪しんでいると、大方はサイコな理屈で収まる。その意味では実に精神的な緊迫感は高い。

 夫を事故で失い、息子はADHDで問題を起こしてばかりの主人公が、次第に追い詰められていく。クリーチャーは主人公自身の心のメタファーであろうとすぐわかる。

 とにかく描写が丁寧で的確、実に辛い。生活の辛さから、息子がいなければと思ってしまう母親の気持ちがリアルに伝わる。

 それを乗り越えられそうな、物語の最後の最後で、物理的にはオカルティックな現象が描写されるが、それもまあ心象描写の暗喩だと考えてもいい。そしてクリーチャーを滅ぼしておしまいかというと、地下室に「飼っておく」という結末は秀逸だった。

 心の闇は完全に消し去ることなどできず、飼い慣らすしかないのだと。

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