2021年11月25日木曜日

『1917』-制作の情熱

 劇場に観に行きたかった映画の一本。

 作戦中止の伝令を届けるため、二人の兵士が戦場を突っ切る。その過程をリアルタイム、ノンストップのワンカットで描く。もうこういう趣向が、それだけで賛辞に値する。応援したい。できれば感心したい。

 さて『カメラを止めるな』のような、本当に肉体で実現しているワンカットではない。あちこちはデジタルで処理してつなげてもいるという。それでも、『カメラを止めるな』よりもはるかに大規模な映画を成立させるための構想が生半可で済むはずもなく、観ていてそれはひしひしと感じられるのだった。そしてその実現にかかるであろう手間も。

 その映画制作者たちの情熱は、命がけで戦場を駆け抜ける主人公の思いとシンクロする。


 それだけで面白くなる要素は十分にあるのだが、そのうえに、そこら中を面白くする工夫は高いレベルで実現していた。危険は常に襲ってくるし、二人で出かけて一人が途中で死んでしまう。哀しみや焦りや報酬のカタルシスや。

 そして、すべてセットで作っている、途中の廃村やら廃墟やらの美しいこと!

 廃墟が美しいのはなぜなのかというのは根本的な疑問ではあるが、それはともかく、思いがけず現れる、花咲く桜の林や、照明弾によってできる建物の影が移動する光景は、それだけで観る価値がある画だった。

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