2021年11月3日水曜日

『マッド・ハウス』-「洗脳」に見えない

 住民全体がコミュニティを作るアパートの小綺麗な「1BR」(ベッドルーム一つの部屋。これが原題)に住み始めてみると、そこはアパート全体がカルト集団で、拷問による洗脳でその一員にされてしまう、という話。

 なかなか笑わない主人公の固い表情が、決して完全には洗脳されていないことを観客に伝えているが、とりあえずはコミュニティの方針に従うようになっていって、さて一体何時反逆することやら、という関心で見続ける。

 期待通り反逆して逃げ出して、さて外に出てみても実はそこらじゅうにそうしたアパートがあったという結末に、ああこれはバッドエンドの苦い終わりを味わうのか、と思っていると、主人公の手のアップ。それを握りしめて通りを走っていくという、それなりに後味の悪くない終わり方で、そこまでの展開のスピードも緊迫感も申し分ない。

 惜しむらくは、そのコミュニティが、本当に魅力的に見えるくらいの説得力があったらもっと面白かったんだが。やはりどうにも暴力的な洗脳、というか恐怖による支配に見えてしまって。

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