2022年3月5日土曜日

『ハロウィン』-ヒット作のはずだが

 題名がオリジナルと同じ「Halloween」だが、リメイクではなく続編。しかも40年後という、現実の推移と同じだけの時間が劇中でも経った設定で、オリジナルの女子高生が老女として登場する。キャスティングは同じ、ジェイミー・リー・カーティスだ(マイケル・マイヤーズの俳優も同じなのだそうな)。

 それだけでなく、タイトルのフォントも同じ、オープニング・ロールのデザインも同じ、物語のあちこちにも、オリジナルと同じカットが意識的に使われている。原作リスペクトが横溢しているが、これはまあオリジナルのファンサービスなんだろう。

 さて、始まってすぐ、オリジナルに比べて情報密度が高くなったロブ・ゾンビ版に比べても、さらに画面の情報が精細で深みがある、という印象。収監中のマイケル・マイヤーズに続いて、初老のローリーの佇まいも、単に記号的なキャラクターというだけでない複雑さがあるように見える(もっとも「ターミネーター」のサラ・コナーか「エイリアン」のリプリーに似過ぎているとも言える)。

 そうしたタッチの高級感とは裏腹に、面白かったかというとそうでもない。結局変わり映えしない殺人鬼の危機を逃れる追いかけっこであり、その攻防に特段の面白みが感じられなかった。

 原因の一つは、マイケル・マイヤーズがどうなると終わりなのかがわからないことか。ナイフや銃弾に怯みはするもののそれじゃあ死なないんだろうな、と思っているとその通り。第一作ではその意外性から恐怖も生じていたのだろうが、もう繰り返されたシリーズではもう意外性もない。ルールがわからないゲームは楽しめない。

 殺し方にさしたる工夫のないのもマイナス。『ハンニバル』や『ファイナル・デスティネーション』シリーズのような工夫が。不謹慎なことには、ホラーにはそういう楽しみがある。ところがマイケル・マイヤーズにはそういう創意工夫もない。何をしたいのかわからない。怒りや憎しみや快楽があるという感じではない。自動的、といった感じだ。そのわからなさが恐怖になるかというとそんなことはない。

 物語としても、冒頭に出てきたジャーナリストコンビが途中であっさり殺されて退場することの不全感も不満。物語の文法をそんな風に外してしまうことが、必ずしも効果を上げているわけでもなく。

 練りに練った作戦で、とうとうマイケル・マイヤーズをやっつけた、という爽快感があればよかったのだろうが、それも、うまくいっているのか偶然なのかも判然としないくらいの杜撰な展開で不審だ。

 ヒット作のはずだが、はて。


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