2022年7月15日金曜日

『夜の来訪者』-精緻な脚本

 一室に集まった人々のそれぞれの事件が順番に語られる進行に、どうも舞台劇っぽいぞと途中で気づいて、後で調べてみるとやはり原作は舞台劇だった。語られる出来事がそれぞれ映画として描写されるから場面はあちこちでロケされ撮影されているが、それが語られる一室で進行しても物語は成立する。

 上流階級の不遜に対する批判、といったテーマを無理に読み取る必要はないと思う。それぞれが誰かを傷つけて、その挙げ句に一人の人物が死んでしまったことを知って後悔する、という形は「こころ」と同じで、しかも「こころ」と違って、こちらはそのまま。その痛みが充分にドラマとしてシリアスな手応えを感じさせる。

 それよりも、そんなのできすぎじゃん、という突っ込みは当然だが、その偶然の連鎖はそういう物語の構築の快感を生んでいるので、そんなリアルな批判よりも素直に面白かった。

 『フロッグ』以来の脚本勝ちの一本。 

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